エンジン・電子制御装備・スタイルまで刷新して間もないZ900 SE。そのストリートファイターの雄に跨り、あてもなく走り出した。スペックや装備には表れない特異な性質が、旅を思わぬ方向へと導いていく。

牡鹿コバルトライン×Z900 SE、名道と名車の化学反応

画像1: 牡鹿コバルトライン×Z900 SE、名道と名車の化学反応

十八成浜ビーチパークからさらに牡鹿半島を南下して、到着したのは観光スポットとして昔から有名な「おしか御番所公園」だ。

駐車場から歩いてすぐの展望台に上ると、東に金華山、西に網地島・田代島を見渡せる。半島の先っぽまでやってきた。

さあ、ここからは帰り道、時刻は12時40分。マップアプリで自宅までの距離を調べると、435kmと表示された。

半島の中央を縦断するワインディングロード「牡鹿コバルトライン」から、帰路の旅を始める。旅仲間たちの評判がよく、一度走ってみたいと思っていた。

ワクワク感で胸いっぱいな私をまず迎えてくれたのは、道を侵食する落ち葉の山だった。厳密にはここはまだ御番所公園とコバルトラインを結ぶ道なので、本線ではないが、念のためライディングモードを出力が穏やかでトラクションコントロールの介入度が高い「RAIN」に切り替えた。

本線に入ると落ち葉の量が落ち着いた。とはいえ、油断はできない。動物注意の鹿標識もあった。様子をうかがいながら、コーナーをひとつひとつパスしていく。

開けた景色は現れない。されどコバルトブルーの海が左手に見えたと思えば、コーナーをひとつ抜けると右手に見えたり、ときおり長めの直線があったり、下ったかと思ったら上ったりと、数秒ごとに風景は一変する。

落ち葉に意識が傾いていたことで、路面のよさに気づくのが遅れた。ひび割れや窪みがほとんどない。タイトなコーナーはなく、広めの片側1車線が続き、センターラインは白色の破線。訪れた季節こそベストではなかったが、抜群に走りやすい道だ。

何より山岳ワインディングとは異なり、上りっぱなしでも下りっぱなしでもないのがいい。ジェットコースターのように走りを楽しめる。

画像2: 牡鹿コバルトライン×Z900 SE、名道と名車の化学反応

そんな環境下でZ900 SEは、活発発地に躍動する。

Φ41mmの倒立フロントフォークとオーリンズ製リアショックを備えた極上の足まわりに、タイヤはスポーツラジアルの傑作・ダンロップのSPORTMAX Q5Aを履く。

路面に吸いつくような安心感のあるグリップを得ながら、軽快感は満点。ブレンボ製のキャリパーやディスク、パッドに、ニッシンのマスターシリンダーを組み合わせたフロントブレーキは、細かな入力操作をイメージ通りに実現してくれる。

ああ、楽しい。1速で回転数を上げて走るのも楽しい。2速をキープして、ゆるりと走るのも楽しい。クイックシフターを使って1・2・3速を頻繁に切り替えるのも、全部楽しい。

気づくと汗ばんでいた。上体の伏せ方と左右への傾け方、着座位置の調整……一番フィットする乗り方を夢中になって探りながら、Zと道を堪能した。そうした意識の一方で、景色の変化も味わう。何て贅沢なひとときなのだろう。

画像3: 牡鹿コバルトライン×Z900 SE、名道と名車の化学反応

元来、ツーリングでは走りよりも旅を楽しむのが好きなのだが、すっかり魅了されてしまった。約30kmにわたる行程は、小さな高級プリンを食べ終わったあとのような、至福と名残惜しさがあった。

とはいえ、陽がぐんぐんと傾き出している。冷え込んでいく時間帯に、400km先の東京まで走らなければならない。ここは必ずまた来たい。今度は薄手のグローブがちょうどいい季節に。

帰路の交通状況を調べる前に、牡鹿コバルトラインをマップアプリにお気に入り登録した。「推し道」が増えたことが嬉しい。

ただ、Z900 SEは「もっと走りたかったぜ」と、ひそかに舌打ちをしているかもしれない。

文・写真:西野鉄兵

画像: ▲今回旅したエリアは、東日本大震災で甚大な被害を受けた場所も含んでいる。その爪痕を感じる場所はいくつもあったけれど、ツーリングをするうえで、困ることはひとつもなかった。むしろ津波標識や海抜表示が各所に設置されており、万が一への備えが旅行者にも心強く感じられた。

▲今回旅したエリアは、東日本大震災で甚大な被害を受けた場所も含んでいる。その爪痕を感じる場所はいくつもあったけれど、ツーリングをするうえで、困ることはひとつもなかった。むしろ津波標識や海抜表示が各所に設置されており、万が一への備えが旅行者にも心強く感じられた。

画像: ▲牡鹿コバルトラインも被災し、その後豪雨による被害も受けた。復旧し全線走行可能となったのは2014年のこと。かつて有料だった観光道路は、いまは無料の名道になっている。ぜひ節度をもって、モーターサイクルで走る喜びを感じてほしい。

▲牡鹿コバルトラインも被災し、その後豪雨による被害も受けた。復旧し全線走行可能となったのは2014年のこと。かつて有料だった観光道路は、いまは無料の名道になっている。ぜひ節度をもって、モーターサイクルで走る喜びを感じてほしい。

画像: ▲帰路の常磐道も往路の国道6号線も途切れることなくスムーズに走行できた。寒波のなかの高速走行は、相応に厳しかったが日を跨がずに無事帰宅。

▲帰路の常磐道も往路の国道6号線も途切れることなくスムーズに走行できた。寒波のなかの高速走行は、相応に厳しかったが日を跨がずに無事帰宅。

画像: ▲不意に始まった1泊2日の旅で900kmを走破。スポーティなイメージが強いZ900 SEは、じつはかなりのオールラウンダーだ。

▲不意に始まった1泊2日の旅で900kmを走破。スポーティなイメージが強いZ900 SEは、じつはかなりのオールラウンダーだ。

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