行き先は自在に変えられる
頸城三山をめぐりたい
「頸城三山」をご存じだろうか。頸城は“くびき”と読み、新潟県と長野県の県境に位置する火打山、妙高山、新潟焼山の3つの山を総称した呼び名だ。頸城アルプスや妙高連峰と呼ばれることもあり、さらに金山、雨飾山を含めて頸城五山と称されることもある。
麓のエリアはツーリングライダーにも人気があるようだが、私にとって未踏の地で、ずっと前にマップアプリに「行ってみたい」ポインティングをしたっきり、訪れる機会はなかった。今日はそのエリアを探索するつもり。



直江津のホテルを出ると、透明度の高い青空に綿雲が浮かんでいた。Ninja 1100SX SEのイグニッションを回して、メーターを起動する。表示された外気温は22℃、絶好のツーリング日和だ。
まずは海が見たい。昨夜は、あまりの暗さに恐怖すら覚えた。明るい海を見なければ、日本海のイメージが変わってしまう。
そうです。これが見たかったです。

どこまでも続く海岸線にはほどよい波が打ち寄せている。海水浴シーズンは終わり、祭りの後のように海の家が寂しげに残っている。サーファーの姿がちらほら見えた。
東京の自宅からの距離は350kmほどで、名古屋へ行くのと変わらないはずだけど、なかなか向かう機会や口実がなく、しばらく足が遠のいていた。

久しぶりの日本海は私にとって、まさに旅の景色だ。青い海と空、白い雲、緑のNinja、はるばる日本海まで来た実感が沁みわたる。
直江津の町を経由して上越ICを目指す。信号機は縦型電球タイプ、周りのクルマのナンバーは「上越」「新潟」「長岡」が多い。週末の午前中、買い物ラッシュの時間帯だろうか。地元の渋滞にはまるも、それはそれで一興と思えてくる。



上信越道に入り南下する。右手に頸城三山が見えてくるのであろうが、どうにも雲行きがあやしい。道の東側は快晴なのに、頸城三山方面はどんよりと重たい鈍色の空をしている。
ポツポツと雨が降りだしてきた。ちょうどよく妙高SAに入る。

▲上信越道・妙高SA。東は快晴、西はどんより。

▲上信越道・妙高SA。東は快晴、西はどんより。
合羽を着るほどではなさそうだが、これから向かう方面を空を見上げると、気が重い。Ninja 1100SX SEのスクリーンをもっとも立てた状態にし、ひとまず最初の目的地へと向かう。

▲いもり池。

▲いもり池。

▲いもり池。
いもり池に着いた。
妙高高原にある小さな池で、四季折々の美しい景色が望めると、以前に観光ガイドブックで見つけて、マップアプリに「行ってみたい」登録をしていた場所だ。
目の前には雄々しき妙高山の姿が望めるはずだったが、中腹から山頂にかけて雲に覆われている。まあこんな日もあるし、そもそも到着する前から分かってもいた。

天気優先の自由な旅
すでに小雨がパラついているのに、これからあの雲の中に突っ込んでいく気にはなれない。頸城三山めぐりは、今回はパス! マップアプリを開き、新たな目的地を探す。
上信越道の東側は晴れている。今日の相棒、Ninja 1100SX SEは射程範囲が広い。急な予定変更でも「雨は嫌だから帰るか」という消極的な思考にはいたらない。
そうして訪れたのは、長野県信濃町にある野尻湖だ。ナウマンゾウが発見された場所である。歴史の教科書のかなり序盤で出てくるスポット、黒曜石とセットで覚えた気がする。

▲野尻湖。

▲野尻湖。

▲野尻湖。
いもり池に比べると広大さが際立つ。やはり東の空は晴れていた。とくに何をするわけでもないが、湖畔の道をのんびり走り、ひと休みした。
自宅までは約300km、正午を過ぎて「そろそろ帰るか」という思いもちらつく。だけど何だかもったいない。明日も朝からやらなきゃいけないデスクワークが控えているけれど、まだ走り足りない。

野尻湖から1時間ちょっと一般道を南下して、長野県上田市と須坂市にまたがる菅平高原にやってきた。ここは「ラグビーの聖地」と呼ばれ、100面以上のコートがあるという。
ラグビーだけでなく、サッカー、テニス、陸上など、スポーツ合宿で有名な地だ。冬はウインタースポーツの行楽客でも賑わう。

▲菅平高原の町営グラウンド。こんな綺麗な芝生でスポーツし放題なんて町の人がうらやましい。

▲菅平高原の町営グラウンド。こんな綺麗な芝生でスポーツし放題なんて町の人がうらやましい。

▲菅平高原のスキー場。
私も学生時代の部活動で訪れたことがあったようなないような、という気分で高原をうろうろと走ってみたが、来たことあるようなないような……20年以上昔のことははっきり思い出せませんな。
遅めの昼食をとる。軒先の看板に名物と書いてあった焼きカレーは、熱々で美味だった。気泡が上がるほどグツグツした見た目はワイルドながら、辛さはなく、口の中で優しい旨味が広がる。また菅平高原に訪れたら、必ず立ち寄りたい。

▲菅平高原にある「焼きカレー屋MEL’s」の焼きカレー。

▲内観も外観もおしゃれな、焼きカレー屋MEL’s。Ninjaと写真を撮っていいか尋ねると「思う存分撮ってって」と快く許可をくださった。

▲内観も外観もおしゃれな、焼きカレー屋MEL’s。Ninjaと写真を撮っていいか尋ねると「思う存分撮ってって」と快く許可をくださった。

▲内観も外観もおしゃれな、焼きカレー屋MEL’s。Ninjaと写真を撮っていいか尋ねると「思う存分撮ってって」と快く許可をくださった。
お店のデザインはアメリカンダイナーのようでかっこいい。アメリカンな雰囲気の背景にNinjaを沿えると、モデルこそちがえど、あの超有名なハリウッド映画を思い出す。
気分はすっかりジェット機乗り、今日はライダー用のテキスタイルジャケットだけど、MA-1やG-1などフライトジャケットを着て走るのも粋だろうね。

陽が傾いてきた。マップアプリで自宅までの距離を表示すると250kmほど。週末ということで自然渋滞も各所で発生しはじめているようだ。
全然楽勝、近いじゃん。
文:西野鉄兵/写真:関野 温、西野鉄兵
※本記事は過酷な行程を推奨するものではありません。ご自身の体調やスケジュールに合わせて、ゆとりをもって楽しみましょう。



