実際に街乗り、高速道路、ワインディングで試乗したところ、スペック以上に扱いやすく、特に中低速域の力強さと安定感が印象的でした。
本記事では走行シーン別にその魅力を詳しく解説します。
街乗り:日常域で常に「美味しいところ」を使える楽しさ

Kawasaki
W800
2026年モデル
総排気量:773cc
エンジン形式:空冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒
シート高:790mm
車両重量:226kg
税込価格:130万9000円
まずは、日常的な街乗りでのフィーリングからお伝えします。
W800の魅力は、なんといっても排気量773ccの空冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒エンジン。アイドリング時や加速時に響く「バララララッ」という独特の排気音と、車体から伝わってくるリズミカルな振動。

「あぁ、自分はいまバイクに乗っているんだな」という確かな実感を、ヘルメット越しの音や、車体に触れている足・お尻・手に伝わる振動などから存分に味わうことができます。
スペック的な話をすれば、最高出力は38kW(52PS)/ 6,500rpmと、同排気量帯のスポーツモデルと比べれば決してハイパワーな部類ではありません。


しかし、注目すべきはそのトルク特性。62N・m(6.3kgf・m)という最大トルクを4,800rpmという低い回転域で発揮してくれるため、高回転まで引っ張ってせわしなくシフトアップするのではなく、街乗りや低速走行など日常的に使う回転域で常にエンジンの「美味しいところ」を使うことができます。
シフトは、発進から交通の流れに乗る際も、過不足なくコンスタントに変速していくイメージです。低速ギアが非常に粘り強いため、街中でのUターンなどもエンストの不安がなく、とてもラクにこなせました。

ライディングポジションも自然で快適です。上体が起きているため周囲の交通状況をしっかりと見渡すことができるほか、シート高は790mmと大型バイクの中では良好な数値で、足つきに不安がないため信号待ちが連続する市街地でもストレスを感じません。
そして驚いたのが、クラッチの軽さです。

クラシカルなルックスゆえに「クラッチレバーも昔ながらの重さなのでは?」と覚悟していましたが、アシスト&スリッパークラッチなどの最新テクノロジーがしっかりと投入されており、操作はとても軽快。
オーセンティックな見た目と最新技術の恩恵が同居している点も、W800の素晴らしいところです。
ワインディング:フラットなハンドルと独特なタイヤサイズで意外にも楽しめる
続いてワインディングです。外観からしてクラシカルなW800に、峠道でのパフォーマンスはさほど求めていませんでしたが、良い意味で予想を裏切ってくれました。

低回転域から湧き上がる厚いトルクのおかげで、急な上り坂が続くような峠道でも、重い車体を億劫に感じることなくグイグイと登っていきます。
低速ギアを選べば、アクセルを開けてシフトアップ、開けて、シフトアップ…とコンスタントにコーナーを駆け抜ける楽しさを味わえるでしょう。
また、本モデルはライディングポジションとハンドリングのバランスも絶妙です。

MEGURO K3

W800
兄弟モデルであるMEGURO K3がライダー側に引かれたアップライトなハンドルであるのに対し、W800はやや低めでフラットなバーハンドルを装備しています。
このポジションがスポーツネイキッドモデルの感覚に近く、路面のギャップなどでフロントが振られそうになった時にハンドルを抑え込みやすく、コントローラブルなのです。

そして、見た目だけでなく乗り味にも大きな個性を与えているのが、独特のタイヤサイズです。
現代のスポーツバイクの多くが前後17インチを採用する中、W800はフロント19インチ、リヤ18インチを採用。タイヤの幅もフロント100mm、リヤ130mmと細身で、扁平率が高い(サイドウォールが分厚い)のが特徴です。
これは名車の血を受け継ぐ「W」には欠かせないスタイルでもあります。

この大径ホイールと細身のタイヤがもたらすのは、現代のスポーツバイクのようなパタパタとクイックなコーナリングではなく、穏やかに路面へ追従していくような旋回性です。
大らかな安定感があり、ライダーを急かさない優しいフィーリングは、峠道をスムーズに、心地よく駆け抜けるのに、これ以上ないほどマッチしていました。
高速道路:強い横風の中でも安定感が抜群
最後は高速道路です。
カウルやスクリーンを持たないネイキッドモデルであるW800にとって、高速巡航は得意分野ではないように思えるかもしれません。しかし、意外な部分にW800の魅力が隠れていました。

そもそもW800に乗っていると、ハイスピードで飛ばそうという気分にあまりなりません。
制限速度120km/hの区間で検証を行った際も、エンジン的には120km/h巡航も余裕をもって可能で、追い越し車線を使ってクルマをリードするだけのパワーは十分に備わっていました。
ただ、速度が上がると段差でフロントが不安定になったり、ハンドルを握る手のひらに伝わる振動が増してきたりします。やはりW800のキャラクターとしては、80〜100km/hあたりでのんびりと風を感じながらクルージングするのが、最も気持ちよく疲れない走り方だと言えます。

そして高速道路において驚かされたポイントが、その「耐横風性能」です。
それは、東京湾アクアラインを渡った時のこと。関東のドライブ・ツーリング好きの間ではかなり有名な横風警戒スポットであり、風速20m/sで閉鎖されることでも知られています。
横風はバイクにとって恐怖でしかなく、私が通過した際も風速14m/sと、本来ならルート変更を考えるレベルの強風でした。

しかしW800は、226kgという適度な車重、大径タイヤが生むジャイロ効果、そして横風を受ける面積が少ないカウルレスの車体が見事に作用し、高い安定感を発揮してくれました。低めのギアを選んでスロットルを開け気味に保つと、力強く前へ進んでくれます。
もちろん、強風は大変危険ですし、“まったく煽られない”というわけではありませんから、読者の皆様は絶対に無理をしないでください。とはいえ、このW800の頼もしい安定感はツーリングにおいて、非常に心強い武器になるでしょう。
まとめ

街乗りから高速道路、ワインディングと走ってみて感じたのは、W800は「絶対的な速度」を楽しむバイクではないということです。しかし、ライダーの操作に対して従順で、思っている以上に軽快に、そして安心して走れる奥深いポテンシャルを秘めています。
何より、スロットルを開けるたびに響き渡る独特の排気音とエンジンの鼓動感は、一度味わうと本当にクセになります。スペック表の数字だけでは決して推し量れない「味わい」こそが、このバイクの魅力でしょう。

文字や写真だけでは、この鼓動感やサウンドを100%お伝えしきれないのがもどかしいところ。
もし少しでもW800に興味を持たれたなら、ぜひ一度、お近くのカワサキプラザなどで実車のエンジン音を聞いてみてください。きっとW800で走り出したくなるはずです。
文:大冨 涼/写真:長谷川徹/まとめ:Kawasaki Good Times Journal 編集部
W800に関するよくある質問
Q1:ネイキッドですが、高速道路での風圧はキツくないですか?
A:カウルがない分、風圧は直接受けます。ただ、W800は80〜100km/hでのんびり走るのが心地よいキャラクターなので、その速度域なら不快な風圧にはなりません。高速を多用する方は、オプションのメーターバイザーなどを装備するのもおすすめです。
Q2:初めての大型バイクでも、街中での扱いは難しくないですか?
A:非常に扱いやすいのでご安心ください。シート高が790mmと足つきが良く重心も低いため、走り出すと数値(226kg)以上に軽快です。また、クラッチ操作が驚くほど軽く、街中のストップ&ゴーやUターンも楽にこなせます。
Q3:「MEGURO K3」との違いは何ですか?
A:エンジンやフレームなどの基本構造は同じですが、主に「外装」と「ライディングポジション」が異なります。MEGURO K3は銀鏡塗装のタンクなど高級感ある専用装備が特徴です。また、ハンドル形状も異なり、MEGURO K3が手前に引かれたアップハンドルなのに対し、W800は低めでフラットなハンドルを採用しているため、よりスポーティな操作感が楽しめます。
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