「よし、免許を取りに行こう!」
そう決めたときは、すべてが順調に進むと思っていた。
教習所へ通い、卒業検定に合格し、バイクを買ってツーリングへ行く。
頭の中ではそんな未来予想図ができあがっていた。
けれど現実は、思った以上に簡単ではなかった。
重いバイク。 思うように曲がれないコーナー。
何度やっても上手くいかない一本橋。
けれど不思議と湧き上がる『楽しい』という感覚。
モーターサイクルライフの世界に踏み込んだ主人公の苦難と成長の物語です。
友人に誘われて、バイク用品店へ
前回の話で「免許を取ってみたい」と思い始めた主人公。
まだ教習所にも申し込んでいないある日、バイクに乗っている友人から連絡が入った。
「教習所行くなら、先にヘルメット見に行こうよ」
見るだけなら…と、休日の午後一緒にバイク用品店へ向かうことになった。
店内へ入った瞬間、独特の空気に圧倒される。
壁一面に並ぶヘルメット。 ライディングジャケット。グローブやブーツ。
まるで知らない世界に迷い込んだようだった。
「どれ選んだらいいの?」
そう聞くと友人は笑った。
「みんな最初はそれ言うんだよ」
店員にサイズを測ってもらい、いくつか試着する。
鏡の前に立ったとき、自分でも少し驚いた。
ヘルメットをかぶっただけなのに、急にライダーへ近づいた気がしたのだ。

教習所の門をくぐる
数日後。
気づけば自動車教習所へ入校の申込をしていた。
勢いとは恐ろしいものである。
手続きを済ませ、説明を受ける。
教習スケジュール表を眺めながら、期待と不安が入り混じる。
周囲を見ると、自分と同じような初心者もいれば、すでに原付に乗っている人もいる。
「ちゃんと卒業できるだろうか」
車の免許も苦労して取った主人公にはそんな不安が頭をよぎった。
しかし教官はこう言った。
「心配しなくて大丈夫です。皆さん最初は初心者ですから」
その言葉に少し安心するとともに、言いしれぬ孤独感を覚えた。
『……あなたはベテランライダーじゃないですか…』

最初の壁は、想像以上に重かった
いよいよ実技教習の日。
教習車の前に立った瞬間、思わず声が漏れた。
「重い……」
写真や動画で見ていたバイクとは違う。
目の前の車体には圧倒的な存在感があった。
まずは引き起こしと取り回し。教習の定番だ。
教官は軽々と見本を見せる。しかし実際にやってみると想像以上に難しい。
全身を使いながら、なんとか車体を支える。
普段から鍛えていた筋肉たちに感謝である。
汗がにじむ。まだ走ってもいないのに疲れていた。そんな主人公に教官は言う。
「コツさえ掴めば簡単に引き起こせるようになるよ!」
本当にそうなのだろうか。その時は半信半疑だった。

一本橋という名の難関
教習が進むにつれ、さまざまな課題へ挑戦する。
スラローム。 クランク。坂道発進。
どれも簡単ではなかった。
だが最も苦戦したのは一本橋だった。
細い橋の上をゆっくり通過する課題。
動画で見ると簡単そうなのに、実際にやると全く違う。
バランスを崩す。
途中で落ちる。
焦る。
また落ちる。
何度挑戦しても上手くいかない。
その日の帰り道は、少し落ち込んだ。
「向いてないのかもしれない。」
そんな弱気な考えも浮かんだ。
しかし次の教習で教官からこう言われる。
「上手な人ほど最初にたくさん失敗してるよ」
その言葉に救われた。

初めて感じた「バイクを操る楽しさ」
苦労しながらも教習は続く。すると、ある日突然変化が訪れた。
S字をスムーズに抜けられた。コーナーが少し自然に曲がれた。
「今、気持ちよかったな」
初めてそんな感覚を覚えた。
それまで必死だった操作が、少しだけ楽しく感じられたのだ。
バイクが自分の意思に反応する。
教習所の中という限られた環境でも、その面白さは十分伝わってきた。
失敗ばかりだった日々の中で、自信の芽が小さく顔を出し始めた瞬間だった。

卒業検定前夜
気が付けば卒業検定が近づいていた。
教習所へ通い始めた頃の不安はまだ残っているが、同時に、自分なりの成長も感じていた。
検定前夜はなかなか眠れなかった。
コース図を何度も見返しながら頭の中で走行イメージを繰り返す。
まるで学生時代の試験前のようだった。
翌朝、教習所へ向かう空気は少し冷たかった。
しかし不思議と気持ちは落ち着いていた。
やれるだけのことはやった。
あとは走るだけだと思えたからだ。
そして免許取得へ
検定終了後、結果発表の時間。名前を呼ばれた瞬間、ようやく肩の力が抜けた。
合格だった。
教習所へ通い始めたあの日。重い教習車に戸惑った日。一本橋で何度も失敗した日。
すべてが頭の中によみがえる。
達成感と同時に本当のスタートはここからだということに気がついた。
まだ自分のバイクもないが、行きたい場所はたくさんある。
地図の上にある景色が、少しだけ近付いた気がした。

第三話「相棒探しの旅へ…」につづく。
まとめ:Kawasaki Good Times Journal編集部
※本記事に使用しているイラストはAI生成にて作成しております。
実際に販売されているモデルとは一切関係ありません。
