圧倒的な速さの「Ninja」、力強いパワーの「Z」に対し、「W」が追求してきたのはライダーの感性に訴えかける“味わい”です。美しいエンジン造形、空冷ツインの重厚なサウンド、そして鉄の馬の力強い鼓動。「W」シリーズはスペックだけでは語れない「走る悦び」と「所有する誇り」を、半世紀以上にわたりライダーへ与え続けてきました。本記事では、そんな「W」シリーズの軌跡を辿り、歴史を彩ってきた5台の名車をピックアップしてご紹介します。

1966年 世界へ挑む原点・650-W1

画像: Kawasaki 650-W1 1966年 総排気量:624cc エンジン形式:空冷4ストロークOHV2バルブ並列2気筒 発売当時価格:32万8000円

Kawasaki
650-W1
1966年

総排気量:624cc
エンジン形式:空冷4ストロークOHV2バルブ並列2気筒

発売当時価格:32万8000円

メグロのDNAを継承した日本最大排気量のモーターサイクル

そのルーツは、かつて日本屈指のモーターサイクルメーカーとして名を馳せた名門「目黒製作所(メグロ)」に遡ります。1960年、カワサキはメグロと業務提携(のちに吸収合併)をし、彼らが培ってきた大型バイク開発のノウハウを受け継ぎました。そして、メグロの集大成ともいえるカワサキ500メグロK2をベースに、カワサキ独自の航空機由来の高度な技術を注ぎ込んで誕生したのが初代「W1」こと650-W1です。

650-W1は、カワサキメグロK2から排気量を拡大。当時の日本最大排気量となる624ccを達成しました。クランクシャフトの耐久性向上や潤滑方式の変更など、大幅な再設計が施されたOHVバーチカルツインエンジンは、最高出力50PSを発生。最高速度は180km/h超、0-400m加速は13.8秒と驚異のパワーを誇り、荒々しくも美しいエンジンの造形は当時のライダーたちに鮮烈な衝撃を与えました。

折しも時代は、より大きく、より速いバイクが求められていた1960年代半ば。世界最大のマーケットである北米市場での成功を強く見据えて開発されたW1は、目を引くレッドとクロームメッキを組み合わせた美しいスタイリングで1966年2月に全米で発表。瞬く間に注目を集め、のちにカワサキが世界的な大排気量スポーツバイクメーカーとして飛躍していくための、極めて重要な試金石となったのです。

1973年 「ダブサン」の愛称で語り継がれる名車・650RS(W3)

画像: Kawasaki 650RS(W3) 1973年 総排気量:624cc エンジン形式:空冷4ストロークOHV2バルブ並列2気筒 発売当時価格:36万3000円

Kawasaki
650RS(W3)
1973年

総排気量:624cc
エンジン形式:空冷4ストロークOHV2バルブ並列2気筒

発売当時価格:36万3000円

初期OHVシリーズの集大成

650-W1から始まり、北米向けのバリエーションモデルとして650-W1SS、650-W2SS、セパレート式のメーターを装備した650-W1S(スペシャル)、スクランブラースタイルの650-W2TT、左チェンジのドイツ式を採用した650-W1SAと進化を重ね、その集大成として1973年に登場したのが650RS、通称「W3(ダブサン)」です。

当時の最新装備であったフロントダブルディスクブレーキをカワサキ車で初採用し、制動力を大幅に向上。走りの質を高めつつも、「W」シリーズ最大の魅力である「味わい」を徹底的に追求して作り上げられました。

特にファンを魅了してやまないのが、そのエキゾーストノート。低回転から響き渡る独特の重低音は、現代のバイクでは決して味わえない官能的な響きを持っており、1974年の生産終了後も根強く支持され、ヴィンテージ市場でも高い人気を誇る永遠の名車となっています。

1999年 時代を超えて再び蘇る・W650

画像: Kawasaki W650 1999年 総排気量:675cc エンジン形式:空冷4ストロークOHC4バルブ単気筒 発売日:1999年2月15日 発売当時価格:68万6000円

Kawasaki
W650
1999年

総排気量:675cc
エンジン形式:空冷4ストロークOHC4バルブ単気筒

発売日:1999年2月15日
発売当時価格:68万6000円

ベベルギヤを備えた新生「W」が25年の時を経て復活

W3の生産終了から約25年が経過した1999年。当時はゼファーシリーズなどが牽引したネイキッドブームが成熟し、多様なモデルが市場を席巻していました。そんな中、カワサキは長らく途絶えていた「W」の系譜を突如として復活させます。それが「W650」です。

カワサキは過去の名車を単なる懐古趣味で復刻するのではなく、「現代の技術で創り得る最も美しいエンジン」を目指すという途方もない挑戦に出ました。その象徴が、カムシャフトをチェーンではなくギアで駆動する「ベベルギヤタワー」を備えた新設計の空冷SOHCバーチカルツインエンジンです。右サイドに伸びるベベルギヤタワーの精密な造形美は、もはや芸術品の域に達していました。

さらに、ロングストローク設定の360度クランクを採用し、W1を彷彿とさせる力強い低速トルクと、独特のパルス感(鼓動)を再現。あえてキックスターターを装備するなど、所有欲を満たすつくりに仕上げられています。また、スタイリングにおいても美しい曲面を描くティアドロップ型のフューエルタンク、重厚なクロームメッキが施された前後フェンダーやキャブトンタイプのマフラーなど細部に至るまで徹底的にクラシカルな美意識が貫かれていました。

速さやハイテク装備を競う時代に、あえて「美しさ」と「鼓動感」、そして「オートバイらしさ」を突き詰めたW650は、多くのライダーの心を打ち抜き、「ネオクラシック」という新たなジャンルをバイク界に定着させました。2006年には普通二輪免許で乗ることができるW400も登場し、若い世代や女性ライダーへと「W」の魅力はさらに広がっていきます。

2011年 規制を乗り越え、魂を継承する・W800

画像: Kawasaki W800 2011年 総排気量:773cc エンジン形式:空冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒 シート高:790mm 発売日:2011年2月1日 発売当時価格:85万円

Kawasaki
W800
2011年

総排気量:773cc
エンジン形式:空冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒
シート高:790mm

発売日:2011年2月1日
発売当時価格:85万円

環境規制を乗り越えFI化、守り抜かれた「Wの味わい」

2008年、厳格化する排出ガス規制の波により、名車W650とW400は惜しまれつつも生産終了の時を迎えました。「空冷大排気量エンジンの時代は終わった」と多くのファンが落胆しましたが、カワサキは決して「W」の火を絶やしていませんでした。

2011年、排気量を773ccまで拡大したW800が登場しました。厳格化する排出ガス規制に適合させるため、本モデルからは燃料供給方式をキャブレターからフューエルインジェクション(FI)へと変更。その際、「Wならではの味わい」を決して損なうことがないよう、カワサキのエンジニアが徹底的なチューニングを施しました。低中速域の豊かなトルク感と空冷ツイン特有のパルス感を際立たせつつ、あの美しいエンジンの造形も見事に守り抜いたのです。

その後、2016年に再び規制の壁にぶつかりW800 Final Editionをもって一度は生産終了したものの、2019年、フレームの90%以上を新設計し、前後ディスクブレーキやABS、LEDヘッドライトなどを装備して現代的な進化を遂げた新型W800シリーズとして再々復活。アップハンドルを採用したW800 STREET、ビキニカウルを備えたW800 CAFE、そして19インチのフロントホイールで往年のクラシックスタイルを体現するスタンダードなW800と、多彩なバリエーションを展開しました。

2026年モデルでは、W800に「パールクリスタルホワイト」と「メタリックディープグレー」の2色がラインナップ。環境の要請に応えながらも、「W」
の魂である「鉄の馬」としての味わいは、今もなお熟成を続けています。

2024年 新たな時代へ走り出す「W」の血統・W230

画像: Kawasaki W230 2024年 総排気量:232cc エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 シート高:745mm 発売日:2024年11月20日 税込価格:64万3500円

Kawasaki
W230
2024年

総排気量:232cc
エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
シート高:745mm

発売日:2024年11月20日
税込価格:64万3500円

心地よい鼓動、圧倒的な扱いやすさを両立

2024年11月に軽二輪クラスの兄弟車・MEGURO S1とともに登場した最新モデルのW230。その最大の特徴は、「W」シリーズ伝統の造形美をコンパクトな車体に凝縮している点です。

美しいティアドロップ型のフューエルタンクやスチール製の前後フェンダー、ワイヤースポークホイール、そしてキャブトンタイプのマフラーなど、その佇まいは「W」の名にふさわしい上質な仕上がり。アナログ2眼メーターや丸型のLEDヘッドライトが、クラシカルな魅力と現代の視認性を見事に融合させています。

また、143kgの軽量な車体と745mmの低いシート高により、誰もが気軽に乗り出せる抜群の足つき性を実現。新設計の空冷単気筒エンジンがもたらす心地よい鼓動感は、街乗りからツーリングまであらゆるシーンで走る楽しさを提供してくれます。

ベテランライダーには懐かしく、若いライダーには新鮮に映るその姿。時代や排気量が変わっても、「乗る人の心を豊かにする」というシリーズの哲学は、色褪せることなく次世代へと確かにバトンが渡されているのです。

現行のWシリーズ

W800
※クリックすると製品ページをご覧いただけます。

画像: W800

W800

W230
※クリックすると製品ページをご覧いただけます。

画像: W230

W230

数値では測れない、モーターサイクルの魅力

絶対的なスピードや最先端の電子制御だけが、モーターサイクルの進化ではありません。普遍的な美しさを守り、ライダーの五感に響く鼓動を追求し続けること。それもまた、ひとつの尊い進化の形です。

時代を超えて愛される「W」シリーズ。そのシートに跨り、エンジンを目覚めさせた瞬間、私たちはいつの時代も変わらない「モーターサイクル本来の純粋な歓び」に出会うことができるのです。

まとめ:Kawasaki Good Times 編集部

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