
Kawasaki
Ninja ZX-25RR
2026年モデル
総排気量:249cc
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:785mm
車両重量:184kg
発売日:2025年10月1日
税込価格:105万2700円
高速道路の合流車線から、4気筒エンジンはうなりを上げ、甲高いメカニカル音を発する。1速で60km/h、2速で90km/h近くまで達する、超高回転の乗り味は何度体感しても特別なものがある。
そのまま120km/hまで加速すれば、それだけで胸がすく思いだ。
余裕たっぷりの120km/h巡航


渋滞を避けるため、4時過ぎに東京都心を出発し、6時には東名高速の足柄SAに着いた。ちょうど朝陽が昇り始め、ほどなく富士の頂に、赤みが差してきた。吐く息は鼻息まで白い。5℃前後といったところだが、ここからは暖かくなる一方のはず。

御殿場JCTから新東名高速にスイッチし、すぐに120km/h区間が始まった。巡航時はトップギアの6速を使う。100km/hで約9800rpm、110km/hで約1万700rpm、120km/hで約1万1500rpm。クランクシャフトの猛烈な回転を脳裏に描こうとしてみたが、うまく想像できない。
Ninja ZX-25RRは1万7500rpm以降がレッドゾーンとなる。分間1万7500回転は、秒間あたりに換算すると291回転。そんなことが物理的に可能なのかと疑いたくなるほどに、エンジン内部は超高速で仕事をしている。

今日の目的地は、静岡県の大井川沿線だ。山岳ワインディングは厳しい季節になってきたので、川沿いの谷間を縫って、なるべく上流を目指してみる。
たんたんと新東名高速を6速で120km/h巡航していると、250ccという排気量は、Ninja ZX-25RRにおいて、何の目安にもなっていないと感じた。あまりにも楽過ぎる。きつすぎないライディングポジションは、カリカリのレーサーよりもどちらかといえばNinja 1100SXなどのスポーツツアラーに近い。

高張力鋼を用いたトレリスフレームに、大型車顔負けのショーワ製のSFF-BP倒立フォーク、BFRC-liteのリアショックを備えた車体は、すこぶる安心感がある。とくに小さなギャップをハイスピードで越えたあとの着地がいい。いつまでも120km/hで走り続けられる気がする。
谷あいのワインディングで高回転を味わう

新静岡ICで高速を下りて、川沿いの県道をゆく。はじめは安倍川、次に中河内川を経て、大井川へと至る。郊外の平地は、しだいに山の風景に変わり、ときおり小さな集落が現れる。

山の斜面を活用した茶畑は、静岡ならではの風景。普段の生活圏を抜け、いま旅をしているということを実感する。




民家が並ぶゾーンでは、ギアを上げてなるべく低回転にし、静音走行を心がけた。それを抜けると、ギアを落とし、節度を持ってピーキーさを楽しむ。1速40km/hでさえ、1万1100rpmも回る。大型モーターサイクルでの公道走行では、決して楽しめない高回転の領域は、刺激に満ちている。

▲静岡県静岡市葵区井川・井川ダム
井川ダムからいよいよ大井川の遡上が始まった。想定よりも時間を食い、時刻は11時を過ぎている。静岡県は東西への行き来でその広大さを感じることが多いが、南アルプスに向かうように南北に延びる幾筋の道では、険しさを目の当たりにする。

路面のコンディションは安定しない。ものすごく走りやすい区間だと思った次の瞬間には、大きな窪みや厄介な亀裂が現れる。ブラインドコーナーの先の日陰はウエットなこともある。晩秋のこの時期、落ち葉が広がる場所も多い。

しかしこのマシンは、数々のトラップをかわすように、もっとも安全なラインを選択しながら、キビキビと走れる。それが楽しくもある。
高所恐怖症には厳しい絶景
道がうねり出してからは、鞍上の景色が開けることはなかった。だからかこのルートは、そこまで知名度が高くない。左右の山々に圧迫されるような気持ちも抱きながら、曲がりくねった道をゆく。
視界を遮る山肌が途切れた瞬間、世界が急転した。
目の前に広がる眺望に、気分までもが一変する。

知る人ぞ知る絶景吊り橋の井川大橋だ。総重量2tまでの車両が通行できる。数年前に写真を見て、一度訪れたいとずっと思っていた。
高所恐怖症のため心配もしていたが、充分に幅があり、つくりはしっかりとしている。これなら大丈夫だと確信する。
しかし橋に乗り入れた瞬間、股間がむずむずしてきた。

広く見えていた幅員は、二輪車にはそれほど意味をなさない。滑り止めの上だけを走ろうと思うと、教習所の一本橋に近い。
欄干がスカスカで、瞬間的に脇見をすると怖さが増した。呼吸を整え、強張る身体をほぐすことに努める。全長258mが途方もなく長い。
無事渡り切って安堵したのも束の間、渡った先に延びる道がすぐに消え入りそうなほど頼りないことに落胆した。戻らなくてはならない。

きっと高所恐怖症でなければ、絶景を楽しめる最高のスポットのはず。私には、わずかに目に入った水面の反射と、カタカタと音を立てる滑り止めの独特な接地感しか記憶が残っていない。



それでも戻ってくると、何かすごいことをやりとげたような達成感があった。Ninja ZX-25RRはニーグリップがしやすく、安定した低速走行も得意だということを身をもって実感した。暖かい時間帯でよかった。真冬は凍結のおそれがあるので、訪れることはおすすめできない。
道の果てへ
さて、大井川沿いの遡上を続けよう。どんな道がどこまで続いているのか、先が気になる。

片側1車線ずつあった県道60号・南アルプス公園線は次第に細くなり、センターラインがあいまいになってきた。谷あいの道には、一足も二足も早い夕暮れが訪れる。日陰が増えてきたことに焦りを感じる。
ときおりクルマ同士ではすれ違いが困難な区間も現れる。小さなものだが落石が増えてきた。これまで以上に気を引き締め、猛スピードの対向車や野生動物の出現、突然の路面の変化など、あらゆることに対応できる速度と心持ちで慎重に進む。

▲静岡県静岡市葵区田代・畑薙第一ダム

▲静岡県静岡市葵区田代・畑薙第一ダム

▲静岡県静岡市葵区田代・畑薙第一ダム
井川大橋から20kmほど走り、畑薙第一ダムに着いた。目の前にそびえているのは、南アルプスのもっとも南側の山並みだろう。山頂部分には薄っすらと雪が見える。
そこから数分で道は途絶えた。
大雨による土砂崩れの影響で、この沼平ゲートより先は進めないらしい。

山峡に最後の日差しが輝いた。

帰りのピストンは往路よりもハードな環境となるだろう。刻々と暗くなり、寒さは増し、道は緩やかな下り坂が続く。
燃料が減ってきたNinja ZX-25RRのタンクをなで、頼むよという気持ちを伝えた。
文:西野鉄兵/写真:関野 温

▲帰路は新東名高速に戻る前に真っ暗になった。LEDヘッドライトとハイビームの照射範囲が頼もしかった。

▲その後、さらに西を目指した。日暮れ以降、山間部は厳しく冷え込んだため、相対的に新東名の120km/h走行では寒さを感じなかった。

▲夕食はNEOPASA静岡で、ラーメンライスと浜松餃子。足柄SAで6時に朝食を食べたっきり走り続けていたので、身に沁みた。

▲最終的には浜名湖へ。1日の走行距離は443kmだった。一般道の走行時間が長く、肩こりを感じたものの、疲労感は覚悟していたほどではなかった。250cc・4気筒スーパースポーツNinja ZX-25RRは、長距離ツーリングを楽しめるスポーツツアラーとしての側面を持っていると断言したい。



