2026年モデルで新たにKLX230シリーズに加わったKLX230 SHERPA S。スタンダードモデルのKLX230 SHERPAより20mm低いシート高を実現している。同車で高速道路を使って富士山麓の山中湖へ、さらにデイキャンプもしてみた!
画像: Kawasaki KLX230 SHERPA S 2026年モデル 総排気量:232cc エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 シート高:825mm 車両重量:136kg 発売日:2025年9月15日 税込価格:66万円 ※シートバッグや積載パーツは筆者の私物です。

Kawasaki
KLX230 SHERPA S
2026年モデル

総排気量:232cc
エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
シート高:825mm
車両重量:136kg

発売日:2025年9月15日
税込価格:66万円
※シートバッグや積載パーツは筆者の私物です。

高速道路で『S』特有の乗り心地を体感

画像1: 高速道路で『S』特有の乗り心地を体感

両足かかとまでべったりと接地している。あいにくの雨だが、足つきのよさはこんな天気だとなおのこと心強い。

自宅を出たのは5時前だった。日の出までは1時間といったところか。時刻は朝、景色は真夜中、一日でもっともひっそりとした時間帯の新宿を抜けていく。

街中を走っていると、KLX230 SHERPA Sはまるでモタードモデルのように感じる。目線の低さが私がこれまで乗ってきたデュアルパーパスのそれではない。

初めて跨ったときは、「本当にフロント21インチなのか?」とタイヤを確かめ、カタログスペックも確認するほどに疑った。オンロードモデルと同じような感覚で走れる。

画像: ▲足つきがいいと料金所でも安心。

▲足つきがいいと料金所でも安心。

永福ICから首都高速4号線に入る。雨脚が強まってきた。まだ渋滞が始まる前の時間帯に都心を抜けられるのは嬉しい。早起きはツーリングライダーにとって三文どころではない徳がある。

中央自動車道に入ってしばらくすると辺りが明るくなってきた。少しずつクルマも増えてきている。気温は15℃前後か、防寒装備を整えてきたので寒さは感じない。雨で手が冷えることが心配だったが、標準装備されているハンドガードのおかげで、かなりラクに走れている。

画像2: 高速道路で『S』特有の乗り心地を体感

KLX230 SHERPA Sは、スタンダードモデルのKLX230 SHERPAが発売された約9カ月後に、追加ラインナップされるかたちでデビューした。ひと言でいえば、ローシートモデル(ローダウン仕様)。シート高は20mm下がり、825mmになった。この数値は前後17インチホイールを採用したモタードモデルのKLX230SMより15mmも低い。

画像3: 高速道路で『S』特有の乗り心地を体感

サスペンションの運動量の目安となるホイールトラベル量はフロント158mm・リア168mm。スタンダードモデルのKLX230 SHERPAはフロント200mm・リア223mmなので、だいぶ思い切った変更が施されている。数値だけを見ると、そこまでサスペンションを詰めて、このスタイルを維持する必要があるのか? とも思えた。

しかし高速道路を走っていると、それが単なるローダウンのためのものではないということが分かった。一般的なデュアルパーパスモデルで高速走行時によく感じる、ぐにゃぐにゃした無駄な上下の動きがないのだ。不必要な運動が少なくなれば、疲労は軽減される。

画像: ▲中央道・藤野PAにて。

▲中央道・藤野PAにて。

実際にKLX230 SHERPA Sは、短いホイールトラベル量でも快適に走れるようにサスペンションの減衰力が調整されている。また前後に専用のデュアルレートスプリングを搭載し、オンロードとオフロードのどちらにも対応できるよう工夫したという。

オンロードモデルに乗り慣れていて、デュアルパーパスへの乗り換えや増車を検討している人は、この『S』なら違和感なく乗れると思う。

中央道の制限速度である80km/hは、充分に余裕を持ちながら、心地よく走れた。単気筒エンジンは小気味いいリズムを刻んでいる。

画像4: 高速道路で『S』特有の乗り心地を体感

この速度域における乗り心地は、高性能サスペンションを搭載した上質なオンロードスポーツモデルに、引けを取らない。タイヤのポコポコ感はどうしても残るが、路面の細かな凹凸やひび割れはいっさい気にならない。

大月JCTから河口湖線に移り、富士吉田の料金所からは東富士五湖道路に変わる。標高が高くなり、空気が冷たくなってきた。料金所で気温を尋ねると、「10℃はないだろうね」という返答があった。10月下旬の富士五湖エリアは、もう冬だと思った方がいい。

雨と霧の山中湖

最初の目的地の山中湖に向かう。道すがら見かけた電光掲示板の温度計には7℃と表示されていた。ヘルメットのシールドは曇る。信号で止まれば、息が白い。

画像1: 雨と霧の山中湖

湖畔のビュースポットへ訪れた。晴れていれば富士山が綺麗に撮れる場所として有名な場所だが、今日はご当地未確認生物のヤッシーが現れてもおかしくなさそうな雰囲気だ。色彩の乏しい景色の中、湖面の水紋だけがゆったりと動く。これはこれで味わい深い。

ここは砂浜のような地面で、オンロードモデルで訪れた場合は毎度緊張する。なので安全なルートを見定めながら慎重に進む必要があった。ところがKLX230 SHERPA Sは、砂地に一歩踏み込んだ瞬間「あ、全然いける」ということが直感的に分かった。浜辺を荒らさないようにだけ気をつけ、あとは好きなルートで行きたい場所まで進める。やっぱりモタードでもオンロードモデルでもなく、デュアルパーパスだった。

画像2: 雨と霧の山中湖

湖畔を発った後、ガソリンスタンドで給油して、コンビニで朝食を買い込み、国道413号線・道志みちに入った。

首都圏のライダーに人気の道もこの天気だとほとんど貸し切り状態だ。しばらくして、ひとりのライダーとすれちがった。苦しげに繰り出されたピースサインからは「雨と寒さ、つらいね」との声が聞こえてくるかのよう。こちらも「頑張りましょう」という気持ちを込めて手を振り返した。

画像: ▲131.3km走り4.58L給油した。実測燃費は28.6km/L。ほぼ高速道路だったので、あまり燃費は伸ばせなかった。燃料計が最後のひと目盛りになっていたが、まだ3Lほど余裕があった。油種はレギュラー。

▲131.3km走り4.58L給油した。実測燃費は28.6km/L。ほぼ高速道路だったので、あまり燃費は伸ばせなかった。燃料計が最後のひと目盛りになっていたが、まだ3Lほど余裕があった。油種はレギュラー。

道志みちを経てダートのキャンプ場へ

ワインディングに入るとKLX230 SHERPA Sは、再びモタードのような感覚に戻った。スリムで軽量、ハンドリングはものすごく素直、ヒラヒラした走りは、雨の中ながら楽しいと思えてくる。荷物を載せている状態でも、雨天時のツーリングペースならパワー不足を感じることはない。軽さと扱いやすさは、それだけで個性となり、魅力となる。

道志みちをそれて、山の中へと入っていく。次第に舗装は荒れ始め、キャンプ場の敷地に入ると路面はフラットダートに変わった。

山中湖の水陸両用バス「KABA」をふと思い出した。観光客に人気のあるアトラクション兼遊覧船的な乗り物だ。陸上から湖へ飛び込むときは迫力があり、反対に水上から陸へと乗り上げる際は平然と船から自動車に変わる。

KLX230 SHERPA Sで、舗装路から未舗装路に入り込んだ瞬間は、それに少し似ていると思った。何のためらいもなく、ダートに飛び込んでいける。かといって、どちらかに極端に特化しているわけでもない。その万能さが頼もしい。

画像: ▲リアタイヤはパンク修理がしやすいチューブレスタイプを採用している。

▲リアタイヤはパンク修理がしやすいチューブレスタイプを採用している。

ここはライダーにも昔から人気のある「道志の森キャンプ場」。車両の乗り入れ自由で、二輪でも四輪でも愛車のそばにテントを立てられるのが魅力のひとつ。敷地が広大で、自分だけのお気に入りスポットを探しやすい。目当ての場所を探しているだけで、林道を探検しているような気分に浸れる。

画像1: 道志みちを経てダートのキャンプ場へ

そんな場所ではKLX230 SHERPA Sの機動力が活きる。あえて大きめの石が転がる場所や、傾斜が急なルートを選んで走ってもみた。はじめのうちは、恐る恐る両足をベタベタつきながら歩くようにギャップを乗り越えた。しかし、すぐに私が思っている以上にたくましく走れることが分かった。

フラットダートだけでなく、名の知られた一般的な難易度の林道なら普通に走破できるだろう。そして「両足をベタベタつきながら」走れるということ自体が魅力だ。多少厳しく感じる場所だとしても、「この『S』なら何とかなる」と自然と思えてくる。

画像2: 道志みちを経てダートのキャンプ場へ

道志の森キャンプ場では、私の20年来の先輩方が前日からキャンプをしていた。どこにいるのかとしばらくサイトをうろうろして、合流した。

タープの中に入れてもらい、レインスーツを脱いで一息つく。150kmほど走ってきたけれど、まだ朝の9時過ぎだ。気づくと雨も収まってきた。

画像3: 道志みちを経てダートのキャンプ場へ

積んできたシートバッグから、チェアやテーブル、カップやガスストーブなどを出して朝食の準備をする。コンビニで買ってきたあれやこれやを、ホットサンドメーカーで温め、焼き目を付けた。

モーターサイクルでのキャンプにおいて、ホットサンドメーカーなど無用の長物だと数年前まで思っていた。だけど、いざ使ってみるとこんなに楽しい調理器具はない。パン、ドーナツ、ワッフル、ハンバーガー、肉まん、おにぎり、ホットスナックもとりあえず挟んで温めれば、元より美味しくなる気がする。

朝食の傍ら、森に溶け込むように馴染むKLX230 SHERPA Sがとても愛らしく見えた。このモデルと日々を過ごせたら、フットワークの軽い生活が送れそうだ。

ツーリング、キャンプ、釣り、登山、温泉……突然の遊びの誘いにも「おう、もちろん行くよ、SHERPA Sで!」そう応えているであろう、アクティブな世界線を妄想しつつ、今日というこの日を楽しんだ。

画像: ▲十代の頃からお世話になっている先輩が「さっきの写真じゃあんまりだろ」と言い、もうワンカット妙にリアリティに欠けるいかにもな写真を撮ってくれた。

▲十代の頃からお世話になっている先輩が「さっきの写真じゃあんまりだろ」と言い、もうワンカット妙にリアリティに欠けるいかにもな写真を撮ってくれた。

文:西野鉄兵/写真:西野鉄兵、櫻井伸樹、Kawasaki Good Times 編集部

This article is a sponsored article by
''.