スポーツ走行も存分に満喫できる

峠道に入ると、VERSYS 1100 SEのスポーティな一面が乗り心地から伝わってきました。前後17インチのキャストホイールを採用し、エンジンはNinja 1100SXシリーズと共通です。走っていると、バーハンドルを採用したポジションの自由度が高いNinjaのように思えてきました。
特筆すべきは足まわりのよさです。スカイフックテクノロジーを採用した電子制御サスペンションとタイヤ(ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T31」)からは、路面情報が手に取るように伝わってきます。
ワインディングロードでは、高速道路以上に路面のガタつきが気になるものですが、足元を注視することなく、コーナーの先を常に意識して走ることができました。ウェットな路面でも同じです。

ライディングモードは「SPORT」「ROAD」「RAIN」と任意で設定可能な「RIDER(マニュアル)」が備わっています。霧の中や雨が降っている際は、「RAIN」を使いました。
「RAIN」モードはトラクションコントロールの介入度がもっとも高められた状態で、出力は穏やかな特性、さらにサスペンションはソフトな設定になります。これが初めて訪れるタイトな峠道では、安心感抜群で、ウェットな路面状況でなくても多用したくなるモードだと感じました。

スロットルレスポンスが穏やかになることで、多少アクセルワークをミスしても飛び出さずに済みます。スロットル開度と加速具合が容易に把握できるため、大型モデル初心者でも扱いやすいと感じるはずです。

ワインディング走行時はKQS(カワサキクイックシフター)がとくに活躍します。主に1・2・3速を使うことになりますが、クラッチレバーを握ることなくシフトチェンジが可能。この『1100』にモデルチェンジした際、クイックシフターの作動開始回転数は2500rpmから1500rpmまで下がりました。アイドリング時の回転数プラスアルファから使えるため、1速で半クラッチ走行をしなければならないような渋滞時以外は、だいたいいつでも使用できます。
峠を走っていて楽しいと感じられるモデルは、「止まれるモデル」だと私は思います。VERSYS 1100 SEはその巨体を制動するブレーキまわりも秀逸です。


フロントブレーキは、Φ310mmの大径ダブルディスクとラジアルマウントモノブロックキャリパーを採用しています。リアブレーキはΦ260mmのシングルディスクを装備。さらにKIBS(カワサキインテリジェントアンチロックブレーキシステム)も装備されています。電子制御を用いて状況に適した油圧を実現するハイテク機構です。
充実した装備の数々
すでにさまざまな装備を紹介してきましたが、VERSYS 1100 SEにはまだまだ便利で役に立つ装備がいろいろと搭載されています。
まずメーターは、アナログ式タコメーターとフルカラーTFT液晶ディスプレイを組み合わせた、非常に多機能かつ高級感あふれるものです。各種設定はハンドルの左右に備わったスイッチで行ないます。

▲画面タイプ1・背景色は白
表示モード(画面タイプ)は2種類あり、それぞれ背景色を白と黒で切り替えられます。オド・トリップA/Bはもちろん、平均燃費、瞬間燃費、航続可能距離の目安、時計、水温計、外気温計、ギアポジションインジケーターが、主に見ていた表示です。

▲画面タイプ2・背景色は黒
さらにスロットル開度やブレーキ圧、加速度・減速度インジケーター、リーン角などもリアルタイムで表示可能。
また、専用アプリ「RIDEOLOGY THE APP」を使って、スマートフォンとのBluetooth通信による接続も可能。各システムのモード設定や、ライディングログの記録などが行なえます。『1100』に進化した際、新たに音声コマンド機能が搭載されました。スマートフォンでナビゲーションを行なう人にはとくに役立つ機能といえるでしょう。

電源ソケットが充実しているのも特長です。メーターの横には12Vの電源ソケットが備わっています。さらにこの『1100』では、USBタイプCのポートもハンドル左側に装備されました。スマートフォンやスマートモニターをハンドルまわりに備えた際に便利な位置です。

▲『1100』にモデルチェンジした際に増設されたUSBタイプCソケット。
撮影車両にはトップケースが備わっていますが、ノーマル状態でもリアキャリアは標準装備。またグラブバー周辺には荷掛フックも備わり、ノーマル状態でも積載しやすい設計となっています。

▲ヘルメットホルダーも標準装備。パニアケースを装着した際も使える位置に備わっています。

▲サイドスタンドとともに、センタースタンドも標準装備品です。

▲リアシートの下にはETC2.0車載器が格納されています。メーターにETCインジケーターが用意されているのも、純正・標準装備ならではの嬉しいポイントです。
専用パニアケースとトップケースの利便性

試乗車両にはアクセサリーパーツのパニアケースとトップケースが備わっていました。ワンキーシステムを採用しており、すべてイグニッションキーで開閉と脱着が可能。ケースはいずれもイタリアのGIVI社製のものです。
容量はパニアケースが片側28L、トップケースは47L。撮影車両のように3点セットにすれば合計103Lもの容量を確保できます。どのケースもヘルメットが収納できる形状なのも魅力的です。

▲撮影時はトップケースにカメラ機材を入れていました。防犯性が高いので安心です。

▲左側のパニアケースには着替えや洗面用具、充電器類を入れました。

▲左側のパニアケースには着替えや洗面用具、充電器類を入れました。
パニアケースは特別なステーなどを使用せず、外せばすっきりとしたスタイリングに戻せます。カワサキが「クリーンマウントパニアシステム」と呼ぶこの仕組みは、VERSYS 1000 SEの時代から評判がいいものです。
専用ハードケースは、車両設計時に合わせて作られているというのが最大のメリットといえるでしょう。パニアケースやトップケースを装着した状態でのテストも重ねられているため、社外品と比べるとフィット感が高く、安心感があります。実際にワインディングや高速道路を走った際に、ケース類やその中に入れた荷物が操安性に悪影響を及ぼすといったことはありませんでした。

またソフトバッグと異なり、キーでロックできて防犯性もバッチリ。密閉性も高いため、雨水もよほどのことがない限り浸入しません。
スタイリングの美しさを含めて、VERSYS 1100 SEでロングツーリングやタンデムツーリングを楽しみたいという人には、手放しでおすすめしたいアクセサリーパーツです。この3点セットがあれば、キャンプツーリングだって楽に行なえるでしょう。
並列4気筒エンジンが織りなす独自のパッケージ
VERSYS 1100 SEが個性的である点に、並列4気筒エンジンを搭載していることが挙げられます。各社、アップライトな乗車姿勢で乗る、リッタークラス前後のスポーツツアラーやアドベンチャーツアラーを展開していますが、国内はもちろん主要な海外メーカーを見渡しても、並列4気筒エンジンを積んでいる車種は希少です。

4気筒エンジンはエンジン単体の重さがあるため、オフロード走行には向いているとはいえません。しかしVERSYS 1100 SEは、前後17インチのホイールを備えたオンロード重視のパッケージです。
未舗装路を走るのは、食事処の砂利の駐車場だったり、宿やキャンプ場の敷地内、舗装工事をしていたごく短距離の道路……くらいが一般的なスキルのライダーにはちょうどいいと思います。

そう割り切れば、大排気量4気筒エンジンのメリットばかりが浮かんできます。『1100』になったことで、低中回転域のトルクが増し、街中やタイトな峠も走りやすくなりました。そして高速道路の移動は『1000』よりもはるかに余裕たっぷりに、快適に行なえます。
より楽に、長距離を走るためにカワサキが徹底的に突き詰めたパッケージなのだと、今回の体験で深く実感することができました。
より遠くへ行きたくなる

そんなVERSYS 1100 SEに乗っていると、いくら走っても走り足りないような気持ちになりました。朝7時前から夜7時過ぎまで、撮影を行ないつつ走った日もありましたが、それでもなお不完全燃焼と思えるほど、まだまだ走っていたかったと感じたのが印象的です。
休憩がてら停車して、観光しつつ散策した際は「VERSYSに乗っている方が楽だな」と思えてきて、再度VERSYS 1100 SEで走り出すと「やっと座れた、楽だあ」と感じたものです。

初めて跨った際は、巨象にでも乗っているかのような気分になりました。人ひとりを乗せてもものともせず、悠々と思うままに目的地まで向かってくれます。
はじめは身長175cmの自分よりも大柄なライダーを想定した設計かとも思いましたが、慣れてくればこの車格が頼もしく感じられて、ちょうどよくも思えてきました。カワサキが「エルゴフィット」と呼ぶ、さまざまな体格の人がちょうどいいと感じられる車体設計は、VERSYS 1100 SEにも適用されています。

▲ハンドルの切れ角は左右34°ずつ確保され、けっこう小回りが利きます。
国内モデルのシート高は820mmに抑えられており、レバー類は手の大きさや好みに合わせて遊びの調整がダイヤルで簡単に行なえます。車重はそれなりにあるため、取りまわしは気を使いましたが、見た目ほどの手ごわさはなく、じつはとってもフレンドリーなモデルだったのだと感じられました。
もし「リッター越えのツアラーは乗れない、自分には関係のないモデル」と考えていたら、ぜひカワサキプラザでまず跨ってみてほしいです。
そして少しでも試乗をすれば、「これは遠くに行きたくなる!」という感動を覚えるはずです。

普通ならフェリーを使ったり、愛車は置いていって現地でレンタルバイクを借りようと思うようなエリアでも、VERSYS 1100 SEなら自走という選択肢が候補に上がってくるでしょう。
日本列島をいい意味で狭く感じさせてくれるモーターサイクルなのだと、深く感じ入った次第です。いままでは距離を理由に諦めていた旅もVERSYS 1100 SEなら、むしろ余裕だと考えられるかもしれません。
文:西野鉄兵/写真:Kawasaki Good Times 編集部


