KLX230SMの街乗り性能と使い勝手

Kawasaki
KLX230SM
総排気量:232cc
エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
シート高:840mm
車両重量:137kg
2026年モデルの発売日:2025年9月15日(月)
2026年モデルの税込価格:63万8000円
※撮影車両は2025年モデルです。
カワサキのロングセラーブランドのひとつである「KLX」。現在、公道走行可能な車種はKLX230シリーズとして展開されています。KLX230やKLX230 SHERPA、KLX230 DFなど、オフロード走行を想定したモデルが中心となるなか、今回紹介するKLX230SMはモタードモデルとなります。
KLX230シリーズならではのコンパクトで軽量な特性はそのままに、前後17インチのロードタイヤを履き、ストリートユースなセッティングに仕上げられているのが特徴です。
2022年10月に初登場したKLX230SMは、一時的に国内のラインナップから姿を消したものの、2025年1月に新型が販売開始され、晴れて復活を遂げました。

軽二輪クラスでは国内メーカーの現行車で唯一のモタードモデルとなります。はじめに、気になる足つき性や取りまわしなどを確認していきたいと思います。
KLX230SMのシート高は840mm。オフロードモデルのKLX230より40mm低い設定です。とはいえ、足つきに不安を抱えるライダーにとっては、少々身構えてしまう数値かも……?
ところが、実際に跨ってみると、思いのほか足つき性が悪くないということがわかります。

▲シート高:840mm/ライダーの身長:165cm

▲両足のつま先がしっかり接地しました。車重が軽いので地面につま先がついてさえいれば、跨ったまま車体を前後に動かすこともできます。

▲両足のつま先がしっかり接地しました。車重が軽いので地面につま先がついてさえいれば、跨ったまま車体を前後に動かすこともできます。
両足を地面に下ろした状態では、左右のつま先をしっかりと接地させることができました。右足をステップに載せたライディングポジションでは、わずかに左足のかかとが浮く程度。お尻をずらさずともほとんどベッタリ足裏がつくので、車体を支えるには十分な足つき性です。

▲幅細のシートや張り出しのないサイドカバーのおかげで脚をまっすぐ下ろしやすくなっています。
この良好な足つき性は、オフロードモデル譲りの細身な車両形状によるもののほか、“よく動くサスペンションのおかげ”というのが大きいでしょう。
先でも触れましたが、KLX230SMは、KLX230の足まわりをストリート用にチューニングしたものです。舗装路での走行向けに、サスペンションが動く幅(ストローク量)を減らしてふわふわしすぎないセッティングとしていますが、とはいえ前188mm・後223mmと充分なストローク量を確保しています(ちなみにKLX230のストローク量はフロント240mm・リア250mmです)。
一般的なロードスポーツモデルよりもサスペンションの動き幅が大きいので、跨るだけでスッと車高が下がってくれますし、石畳や路面が荒れた舗装林道などデコボコ道での安心感も顕在です。これなら、ちょっとしたダートに入ってしまっても、臆せずに進めそうだと思いました。


また、前後のサスペンションのバランスが絶妙で、ライダーが跨ると車体姿勢がわずかにフロント下がりの状態になります。リア下がりにならないので、ハンドルバーの高さもちょうどよく、ちょこっとスポーティな走りをしたいときなどでも安心です。
次に、取りまわしについてお伝えします。
見た目や排気量からして軽量そうですが、まさにその通り。どんな道でも倒す心配がなさそうです。
KLX230SMの車両重量は137kg。国内メーカーが現在販売しているマニュアルトランスミッション仕様の軽二輪オンロードモデルのなかで、最も軽量なモーターサイクルなのです(※2025年9月18日現在・編集部調べ)。

また、ハンドル幅が845mmと一般的なオンロードモデルと比べてやや広めな数値となっていますが、車格そのものがコンパクトでハンドルバーの位置が高くないため不便さはありません。
ステアリングをフルに切った状態でも、上の写真のように、腕にゆとりのある状態で左右のグリップを握ることができ、車体を自分側に傾けなくても安心して取りまわすことができました。

▲ライディングポジションを取ったときにも感じたことで、オンロードの走行を考えると狭すぎず、広すぎない、ちょうどいいハンドル幅だと思いました。
加えてステアリングアングルは片側45度も確保されています。驚くほどの切れ角でした。これなら狭いガレージで作業するときや、細道を引き返したいときでもスムーズに向きを変えられるでしょう。
走り出す前の足つきや取りまわしで、その扱いやすさや使い勝手の良さにびっくりしました。
“街乗りが楽しい”ってスゴい!

一口に「街乗りがしやすいモデル」といっても、スクーターのようなラクさがあったり、大型のツーリングモデルのようなゆとりある走行フィールだったりと、その理由はさまざまです。
KLX230SMの場合は、とにかく「街乗りが楽しい!」と感じられるモーターサイクルでした。
エンジンは排気量232ccの空冷単気筒を搭載しており、アイドリング状態では「トコトコトコ……」という心地よい排気音が響きます。信号などで停車することの多い街中でも、この音が聴こえると、なんだかワクワクしてきます。

走行中はしっかりスロットルを開けて、テンポよくシフトアップ。どのギアでもコンスタントに加速してくれます。
1速、2速……とそれぞれ引っ張ってからシフトアップ、というのも試してみましたが、個人的にはエキゾーストが唸る音よりも、やさしい鼓動感が残るフィーリングの方が好みだったので、早めに6速までアップ。こうしてゆるりと乗るのが一番心地よかったです。
スロットルを開けたときのレスポンスにピーキーさはなく、とても扱いやすいです。さほど操作に敏感にならずとも安心して乗れるので、交通量の多い道路などでも周りの環境や音、車体から伝わってくる鼓動など、「操作すること」以外のさまざまなことに気づけるゆとりを持てました。

視線が高く、ハンドル越しの景色は開放的で、周りの風景を広々と見渡せるのもポイント。
背筋が伸び、胸を張れるライディングポジションとなっていますから走行風が気持ちよく、なんだか凛とした気分に。発進・停止の連続でも、クラッチレバーが軽く、握り疲れしにくいのも助かります。
車体の取りまわしや足つき、運転性能のどれをとっても、エントリーユーザーにもってこいの一台。アクセルを開けると伝わってくるやさしい鼓動感は、小排気量ながらライダーに満足感を与えてくれます。KLX230SMは、何気ない移動が楽しいツーリングに変わる、そんなモーターサイクルです。
文:大冨 涼/写真:Kawasaki Good Times 編集部