元国際A級ライダーのベテラン・太田安治さんが、カワサキのレトロスポーツモデル・W230を駆り、北関東・那須までのトータル400kmのショートツーリングへ出発! 市街地、高速道路、そして那須の峠道を走り抜けながら感じた、W230の奥深い魅力と等身大の想いを綴ります。

W230で那須まで、ショートツーリング

画像1: W230で那須まで、ショートツーリング

日本や欧米の経済的に豊かな国々ではモーターサイクルが「趣味の乗り物」として認知されている。

しかしそうした先進国に共通する問題がライダーの高齢化。これまで大パワーや長距離移動の快適さを求めて大型車に乗っていたライダー達がフィジカルの変化を感じ、気負わず走り出せるミドルクラスやライトウエイトクラスに乗り換える「ダウンサイジング」が徐々に進んでいる。

高齢ライダーに分類される僕も、日常的に大型車に乗ることは辛く感じるようになった。そこで現在所有している長距離ツーリング用の大型車に加え、普段使い用の一台を増車しようかと検討中。条件は車検がなく、高速道路も走れること。つまり126cc~250ccの軽二輪クラスから選ぶことになる。

画像2: W230で那須まで、ショートツーリング

さらに市街地を走りやすいロードスポーツタイプ、流行にとらわれない車体デザイン、妻や娘も安心して乗れる操縦性やエンジン特性……と絞り込んでいくと、候補に残るのがW230。

というわけで、埼玉の自宅から那須まで、トータル400kmのショートツーリングに出かけ、改めてその乗り味を検証した。

世代を超えて愛されるレトロな佇まいと、気負わない足つき性

画像: Kawasaki W230 2026年モデル 総排気量:232cc エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 シート高:745mm 車両重量:143kg 発売日:2025年9月15日 税込価格:66万5500円

Kawasaki
W230
2026年モデル

総排気量:232cc
エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
シート高:745mm
車両重量:143kg

発売日:2025年9月15日
税込価格:66万5500円

車体デザインはシックな色合いとグラフィック、丸目一灯のヘッドライト、クロームメッキ仕上げのパーツ類、スポークホイール、フロントフォークのゴムブーツ、段差の少ないロングシート、キャブトンタイプのマフラーなど、1950~60年代のオーソドックスなスタイルにまとめられている。

個人的な話で恐縮だが、僕の妻は大学生のときにW230と同様のコンセプトで作られたカワサキのエストレヤに一目惚れして新車を買った。

結婚したときに嫁入り道具(?)として持ってきたものの、娘二人の子育て期間中に乗る時間がなくなって手放したことをいまだに後悔している。それだけにW230を見た瞬間に「これ乗りたい!」と目を輝かせ、娘たちも「カタチも色も可愛い!」と共感する。ライダーの年齢や男女を問わないこともレトロスタイルの魅力だろう。

画像1: 世代を超えて愛されるレトロな佇まいと、気負わない足つき性

乗り手を選ばない、という点ではシート高が低くて足つき性がいいことは重要なポイント。W230のシート高は745mmで、小柄なライダーでも両足がしっかり接地するし、身長176cmの僕だと跨がったまま両足を着いて前後に移動させることも楽々と行える。

画像2: 世代を超えて愛されるレトロな佇まいと、気負わない足つき性

加えてシート後部の段差も少ないから、乗り降り時に足を高く上げる必要がない。上体がほぼ直立し、膝や足首の曲がりが緩くてリラックスできるライディングポジションと相まって、気軽に乗り出せる要素が重なっている。

エンジンのベースは同社のオフロードモデルであるKLX230だが、市街地走行を前提にクランクまわりの重量や吸排気カムシャフト形状、バルブの大きさ、ECUのプログラムに至るまで実に細かく変更されていて、低回転域では明らかにトルクフルで扱いやすい。

アイドリング回転が1800回転とやや高めに設定されているからゼロ発進時のエンジンストールを起こしにくく、スロットル操作に対する反応も穏やかなので発進/停止の繰り返しも苦にならない。これならビギナーやスクーターから初めてマニュアルミッション車に乗り換えるライダーでも不安なく走り出せるはずだ。

市街地の喧騒を抜け、東北道のゲートをくぐる頃には、このエンジンの従順さにすっかり安堵していた。

いざ東北道へ

普段使い用であっても仕事やショートツーリングでは高速道路や自動車専用道路を走る機会がある。230cc単気筒エンジンが発生する18馬力は動力性能的に足りるのか? 車体の安定性はどうなのか? 実のところ僕が最も気になっていたのはこの2点だ。

画像1: いざ東北道へ

トップギアの6速で100km/h走行時のエンジン回転数は約5800回転。カタログに記されている最大トルク発生回転数とぴったり一致するから高速道路クルージングは余裕がある。上り勾配や向かい風で失速することもなく、手足を痺れさせるような高周波振動も抑えられている。

速度制限120km/h区間では約7000回転で、こちらは最高出力発生回転数と一致する。この速度になると「けっこう回ってるなあ」とは感じるが、回転フィーリングやメカノイズが荒々しくなることはなく、ひたすら淡々と回っているのでストレスはない。

ただ、ネイキッドスタイルゆえにウインドプロテクション効果はほとんどなく、直立した上半身が走行風圧をダイレクトに受けるから、ストレスなくクルージングができる上限速度は100km/hあたり。長時間クルージング適性が高いとは言えないものの、苦手というわけではない、といったところだ。

画像2: いざ東北道へ

だからこそ、高速道路では左側の走行車線キープがいい。後続車を気にする必要がなく、うっかり速度違反してしまうこともないから心に余裕が生まれて、刻々と変わる景色、空気の匂いを存分に楽しめる。

直進安定性は120km/hの速度でも何ら不安要素がない。高架部分にある舗装の継ぎ目ではリアから突き上げられる感触があるが、一発で収束するから車体姿勢は乱れない。フロントの18インチタイヤ、フレーム剛性、前後サスペンション設定のバランスが優れていることを実感できた。

画像: ▲1時間30分ほど走るとようやく那須に到着。日が高くなるにつれ気温も上がり、春の訪れが感じられた。

▲1時間30分ほど走るとようやく那須に到着。日が高くなるにつれ気温も上がり、春の訪れが感じられた。

単気筒の鼓動をBGMに、那須のワインディングを駆け上がる

那須のインターを降り、そのまま北上して山岳地帯へ足を踏み入れる。そこから広がるのは峠道だ。となれば、コーナリングを楽しみたいし、上り勾配での動力性能も気になるところだ。

画像1: 単気筒の鼓動をBGMに、那須のワインディングを駆け上がる

W230の動的な車体姿勢はやや後ろ下がりに感じ、バンクさせるとリアから穏やかに向きを変え、ゆったりと前輪が追従して旋回する。コーナーの曲率に関わらず、タイヤの荷重配分や体重移動を意識する必要などまったくない。

画像2: 単気筒の鼓動をBGMに、那須のワインディングを駆け上がる

車体が軽いので寝かし込みや切り返しをクイックに行ってスポーティーに走らせることもできるのだが、そんな気が起きないこともW230の特徴、というか持ち味と言える。

さすがに15%以上の上り勾配になると適切なギア選択が必要で2~3速を多用することになるが、レッドゾーンが始まる8500回転までスムーズに吹け上がるから、シフトアップするかどうか迷っても、そのままのギアでクリアできる。言うなれば「高回転域のフレキシブルさ」を秘めているのだ。

画像: ▲こちらは茶臼山を望める那須ロープウェイ。クルマ用・二輪用、それぞれの駐車場が完備されている。

▲こちらは茶臼山を望める那須ロープウェイ。クルマ用・二輪用、それぞれの駐車場が完備されている。

画像: ▲付近の駐車場からは、北関東の山々が望める。そよぐ春風が心地よい。

▲付近の駐車場からは、北関東の山々が望める。そよぐ春風が心地よい。

ベテランにこそ味わってほしい「奥深さ」

画像: ベテランにこそ味わってほしい「奥深さ」

早朝から夕方まで走ってはっきりしたのは、軽くて小さな車体によって気軽に乗れること。そして4000~6000回転の範囲に収まるようにギアを選べば、単気筒エンジンらしい歯切れのいい排気音がBGMとなり、スロットルを開けたときのリアタイヤの蹴り出し感と合わせて走りの充実感を高めてくれるということ。

これならば、かつての妻がエストレヤに感じたであろう「モーターサイクルがある生活の悦び」を、今度は家族みんなで共有できる確信が持てた。

エントリーユーザーに好評を博しているW230だが、むしろこの乗り味を深く理解し、賛同できるのは豊富な経験とライディングスキルを持つベテランライダー達だと思う。

その意味でも、冒頭に書いた「ダウンサイジング」に適した一台に仕上がっているといえるだろう。

文:太田安治/写真:南 孝幸/まとめ:Kawasaki Good Times Journal 編集部

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