速さと引き換えの「我慢」はもう過去のこと。圧倒的なパワーと驚くほどフレンドリーな乗り味を両立したカワサキのスーパースポーツモデル・Ninja ZX-4RRについて、元国際A級ライダーの太田安治さんが80年代当時のスーパースポーツを振り返りつつ、その劇的な進化と「操る楽しさ」の真髄に迫ります。
画像: Kawasaki Ninja ZX-4RR 2026年モデル 総排気量:399cc エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒 シート高:800mm 車両重量:189kg 発売日:2025年9月1日 税込価格:121万円

Kawasaki
Ninja ZX-4RR
2026年モデル

総排気量:399cc
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:800mm
車両重量:189kg

発売日:2025年9月1日
税込価格:121万円

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30年の沈黙を破り帰ってきた、400ccレプリカ

2023年7月、Ninja ZX-4RRが登場したときに「カワサキが新世代の400ccレーサーレプリカを作った!」と大きな話題になったことは記憶に新しい。

画像1: 30年の沈黙を破り帰ってきた、400ccレプリカ

「レーサーレプリカ」は1980年代に大ブームを巻き起こしたジャンルで、文字どおりレーシングマシンに近い構成とルックスを持ったモデル達を指す。ブームの起爆剤となったのは市販車をベースにエンジンチューニングや車体モディファイを施して戦うプロダクションレース。

改造範囲の狭いSP(スポーツプロダクション)クラスはベースモデルの性能がレースでの成績を左右して販売台数に直結し、大幅な改造が許されるF3(フォーミュラースリー)クラスは国内4メーカーの技術的威信をかけた争いが繰り広げられた。

カワサキは89年にZXR400でF3レースに参戦して翌90年には国際A級クラスの年間チャンピオンを獲得してみせたが、F3クラスは91年限りで全日本選手権から外れ、ZXR400も99年型を最後に生産を終了。

レプリカモデルの先鋭化に対する反動もあって、90年代に入ってからはカワサキのゼファーに代表される乗りやすさ重視のネイキッドモデルが人気の中心となった。こうしてレプリカ時代は終焉を迎えたのだが、それを寂しく感じたスポーツモデルファンは多い。もちろん僕もその一人だ。

画像2: 30年の沈黙を破り帰ってきた、400ccレプリカ

それだけにZXR以来、四半世紀を経て登場したNinja ZX-4RRは、80年代ブームを知るライダー層から懐かしさを伴った熱い視線を浴び、レーサーレプリカを知らない若いライダー達には新しいジャンルとして魅力的に映った。

事実、サーキットで行われたNinja ZX-4RRの試乗会では、僕も含めたベテランジャーナリスト達が扱いやすいスポーツ性を絶賛し、それまでスーパースポーツに関心を示さなかったライダー達も積極的に操作する楽しさ、面白さを興奮した口調で語っていたのだ。

F3レーサー級のパワーを誰もが扱える「魔法」のようなエンジン

80年代中盤からの400ccレプリカモデルは、国内メーカー間の自主規制によって最高出力の上限が59馬力(92年からは53馬力)に制限されていたが、F3レース用エンジンは主に吸排気系を大幅に変更、チューニングしてパワーを絞り出していた。僕は80年代からライダーやチーム監督としてレースに関わっていたが、自チームのF3マシンは約80馬力。つまりNinja ZX-4RRはスタンダード状態でF3レーサーと同等のパワーを秘めているのだが、出力特性はまったく異なる。

画像1: F3レーサー級のパワーを誰もが扱える「魔法」のようなエンジン

加速力と最高速度を稼ぐためにピークパワーを絞り出すF3仕様のエンジンは、本領を発揮するパワーバンドが9000~1万3000回転あたりで、ここから外れると急にパワーが落ちる。タコメーターを見てパワーバンドから外れないようにギアを選択しないと加速力は一気に鈍り、発進時もスロットルとクラッチの操作に気を遣った。

その感覚が体に残っているのでNinja ZX-4RRで初めてゼロ発進するときは慎重になったが、実際は少々雑に操作してもスッと動き出す。2000回転台からスロットルを大きく開けてもモタつくことなく、スムーズに回転が上昇するからパワーバンドを意識する必要などない。これだけで、30年間の時を経てエンジンの制御技術が飛躍的な進化を遂げたことを思い知らされる。

画像2: F3レーサー級のパワーを誰もが扱える「魔法」のようなエンジン

1万1000回転あたりからはフロントタイヤが浮き上がりそうな勢いで加速し、1万6000回転を超えてレブリミッターが介入するまでフリクションを感じさせずに軽く回る。この小気味よさに加えて加速中は豪快な吸気音が響き、ライダーはスーパースポーツ独自の世界に没入できるのだ。

市街地では4000回転前後でシフトアップし、3速に入れておけば流れに乗れるほどフレキシブルな特性。高速道路の120km/h区間では6速で約7500回転になるが、不快な振動やせわしなく回っている感はなく、直列4気筒のスムーズな回転フィーリングが心地いい。

「ライディングモード」を使いこなす

画像1: 「あの頃」より速く、そして優しい|ベテランが認めるNinja ZX-4RRの魅力とは?【インプレッション】

パワーモードは最高出力を発揮するF(フルパワー)と、最高出力を約80%に抑え、スロットルレスポンスを穏やかにするL(ローパワー)の2段階で、KTRC(カワサキトラクションコントロール)は3段階が設定されている。

ライディングモードの「SPORT」「ROAD」「RAIN」では、パワーとトラコンがプリセットされていて、「RIDER」ではそれぞれを任意に設定できる。

ウエット路面で加減速時のタイヤスリップを最大限防ぎたいなら「RAIN」。ドライ路面でタイヤグリップを活かして走るなら「SPORT」がおすすめ。モードの状態は液晶メーター上に表示され、切り替え/設定はハンドル左側のスイッチで行なう。

極上の足まわりが「サーキット70:公道30」を逆転させる

画像1: 極上の足まわりが「サーキット70:公道30」を逆転させる

80年代の400ccレプリカモデルは、ハイグリップタイヤを装着してサーキットを走ったときに車体が受ける高いG(加速度)を織り込んだ設計がなされていた。フレーム剛性は高め、前後サスペンションは硬め、車体姿勢は前下がり、が主流だったことから、街乗りやツーリングではハンドリングが重く、乗り心地もハードだった。

しかし、Ninja ZX-4RRの車体設定は意外なほど優しい。

かつてのレプリカは「サーキット70%:公道30%」の配分で作られていると感じたが、Ninja ZX-4RRはその逆。開発陣は現実的な状況での快適さを強く意識したのだろう。それは前後サスペンションのセッティングにも現れている。

フロントのSFF-BPフォークはソフトめのスプリングにストローク初期から減衰力を効かせたダンパーという組み合わせで、路面から伝わるゴツゴツ感をいなしつつ加減速でのフワつきを抑制。リアのBFRC-liteサスペンションはフロント同様に街乗りでもストローク量を有効に使うセッティングで、ギャップ通過時にリアから突き上げられる動きが穏やか。コーナリング中に荒れた路面に出くわしても車体が弾かれにくいから、肉体的、精神的な負担が少なく、余裕を持って対処できる。

フロントサスペンションはスプリングプリロード、リアサスペンションはプリロードに加えて圧側、伸び側の減衰力も個別に調整でき、ライダーの体重や好み、ライディングシーンに合わせられることもこのモデルの大きな魅力。サスペンションだけでこれほど乗り味に差が出るのか! と驚かされるだろう。

画像2: 極上の足まわりが「サーキット70:公道30」を逆転させる

ライダーが前傾姿勢になることもあって街乗りペースではハンドリングが若干フロントヘビーに感じるが、それが安定性と素直な旋回性を生み、タイヤのグリップ状態も明確に感じ取れる。これもバンク角やGに合わせた扱いが要求され、公道では気疲れした80年代のレプリカとの違いだ。

もう一つ感心したのがフロントブレーキのフィーリング。ほぼ同じ車体のNinja ZX-25RがΦ310mmのシングルディスクを装備しているのに対し、Ninja ZX-4RRはΦ290mmのダブルディスク装備で制動力全体が底上げされ、ブレーキフェード(摩擦熱による制動力の急低下)耐性も高められている。

画像3: 極上の足まわりが「サーキット70:公道30」を逆転させる

ハードなスポーツライディングに対応させた仕様だが、公道でメリットを感じるのはタッチとコントロール性の良さ。ブレーキレバーへの入力に対する制動力の増加がリニアで、人差し指と中指の2本掛けで僅かな減速からABSが作動する急減速まで自在にコントロールできる。

画像4: 極上の足まわりが「サーキット70:公道30」を逆転させる

さらにレバーから指を離したときのディスク面に対するパッドの引きずりもない。モノブロックキャリパーの剛性、ブレーキホースの膨張率、パッドの材質など、ブレーキシステム全体を市販車離れした高レベルでバランスさせているのは見事だ。

“使い切る楽しさ”が「あの頃」を思い起こさせる

現在のスーパースポーツモデルは600cc~1000ccクラスが主流で、スキルの高いライダーが本格的なサーキットで走らせない限り本来の性能を引き出すことは難しいが、Ninja ZX-4RRなら峠道でもライダー主導で操る爽快さを堪能でき、高速道路の合流といった限られた条件下ではフル加速も楽しめる。

思い切った商品企画力と、ユーザーが求める以上のレベルに仕上げてくる開発力は実にカワサキらしいところ。初めて中型クラスに乗るライダーでもすぐに馴染め、経験豊富なベテランライダーをも満足させる。

画像: “使い切る楽しさ”が「あの頃」を思い起こさせる

絶対的な速さよりも相対的な楽しさを大事にしたキャラクターがNinja ZX-4RRの魅力。

サーキット走行会に参加してスポーツライディングにワクワクする。「あの頃」に走った道をなぞってあの頃の想いを蘇らせる。走ったことのない道をツーリングして新たな思い出を刻む。Ninja ZX-4RRはそうしたライダーのニーズに真正面から応えてくれる一台だ。

文:太田安治/写真:南 孝幸/まとめ:Kawasaki Good Times 編集部

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