激坂「つくば道」に挑む

Kawasaki
noslisu
2025年モデル
シート高:745mm-905mm
車両重量:31.4kg
税込価格:39万8200円

Kawasaki
noslisu
2025年モデル
シート高:745mm-905mm
車両重量:31.4kg
税込価格:39万8200円
今回、長期使用レビュー第4弾の舞台に選んだのは、茨城県・筑波山の麓から山の中腹にある筑波山神社へと続く「つくば道」を経由し、標高530mのつつじヶ丘駐車場へと繋がるルートです。
とくに、つくば道はかつて参詣道であったため、歩行者用の階段をそのまま舗装したような箇所が多く、平均勾配12%、最大勾配は25%を超える、まさに「壁」のような急勾配が立ちはだかります。
一般的な2輪の自転車であれば、プロ級の脚力を持つサイクリストでも冷や汗をかくようなこのルート。noslisuの車重は31.4kgと、電動アシスト自転車としても重量級です。「本当に登り切れるのか?」という一抹の不安を抱えながら、ペダルを漕ぎ出しました。
前2輪がもたらす「低速での絶対的な安定感」
麓の北条地区から走り始めると、まず驚かされるのはその安定感です。一の鳥居を過ぎると、路面はアスファルトから滑り止め付きのコンクリートへと変わり、本格的な難所区間が始まります。

▲鳥居から先が激坂区間です。歩きでも疲れそうな傾斜を登っていきます。
ここでnoslisuの最大の武器が光ります。通常の自転車であれば、あまりの急勾配に速度が落ちるとバランスを崩しやすくなりますが、noslisuは前2輪のおかげで、時速数キロという超低速でもピタリと安定走行が可能です。
ギアを7段から順に落としていき、最終的に1段へ。アシストモードを「パワー」に設定すると、モーターが勇ましい唸りを上げ、力強く地面を蹴って進んでいきます。
特筆すべきは、一度も立ち漕ぎをする必要がなかった点です。後輪にしっかりと荷重がかかる設計と、フロント2輪の接地感が組み合わさり、前輪が浮き上がるような恐怖感もなく、ぐんぐんと坂を登ることができました。

▲こうした坂道の途中でも、バランスを崩すことなく坂道発進できるアドバンテージを有しています。
ただし、ここで一つ注意点があります。noslisuにはモーターによる「押し歩き機能」が搭載されていません。30kgを超える車体をこうした坂道で押し歩くのは、大人でも至難の業です。
幸いなことに、強力なモーターアシストにより、つくば道の険しい登り区間でも坂道発進が可能なので、「noslisuの基本は、降りずに登り切ること」という方針で運用すると良いでしょう。
峠道で感じる、自然と一体になる悦び
激坂区間のつくば道を抜け、県道42号から風返峠へと合流すると、勾配が緩やかになり2車線のアスファルト道路へと変わります。
ギアを1段から7段に入れて速度を回復させ、風景を楽しむ余裕も出てきました。木々の間からは、眼下に広がる関東平野の絶景がチラチラと見えます。

▲標高が上がるにつれて、木々の合間から見える景色も雄大なものになっていきます。
車やオートバイでは一瞬で通り過ぎてしまうこの景色を、心地よい疲労感とともに五感で味わえるのは、自転車ならではの醍醐味です。
noslisuは、決してスピードを競うための乗り物ではありません。「低速で、しかし確実に、景色を愛でながら進む」。そんなスローな旅のパートナーとして、これほど心強い存在はないと感じました。
そんな余力を残した状態でしばらくヒルクライムを続けていくと、あっという間に標高530mのつつじヶ丘駐車場に到着。バッテリーの消費は約30%でした。

▲つつじヶ丘駐車場にて。noslisuであれば、ほどよい疲労感でヒルクライムを達成できました。
平地ではロングモードで電池残量を温存し、登坂ではパワーモードに入れるといった形で使い分ければ、「つくば市内→りんりんロード経由→筑波山」というツーリングも行えるでしょう。
下り坂で発見した「隠れた設計の妙」
登坂性能もさることながら、今回のテストで最も印象的だったのは、実は「下り坂」での挙動でした。
12月中旬の撮影時、路面には多くの落ち葉が散らばり、非常に滑りやすい環境でしたが、全輪に装備されたディスクブレーキが、重量級の車体を指先の操作で確実にコントロールしてくれます。
片方の前輪が落ち葉で滑っても、もう片方の前輪と後輪でグリップを維持し、転倒を回避してくれる安心感は、2輪車では絶対に味わえないものです。

▲自転車での下り坂は怖いものですが、noslisuではサスペンションレスの前2輪が荷重を受け止めてくれるため、安定しています。
さらに「サスペンションがない」ことも、下り坂ではメリットに感じられました。
一般的に、サスペンションは衝撃吸収に役立ちますが、急な下り坂ではブレーキ時にフロントが大きく沈み込み、重心が前方に移動してしまいます。
これが恐怖心やバランスの喪失に繋がるのですが、noslisuは沈み込みがないため、急勾配でも車体が水平に近い感覚を保てます。重心を少し後ろに引くことを意識するだけで、まるで地面に吸い付くような感覚で安全に下り切ることができました。
免許返納後の「新しい翼」としての可能性
今回の試乗を通じて確信したのは、noslisuが単なる趣味の乗り物を超えた「次世代の生活モビリティ」であるという点です。
現在、免許返納後の移動手段としてシニアカー(電動車椅子)が一般的ですが、登坂能力や巡航速度には限界があります。

▲2輪の自転車ではバランスを崩しやすい砂利道であっても、安定走行が可能です。
一方で、車両価格が同価格帯(約40万円前後)であるnoslisuは、足腰にある程度の自信がある方にとって、より行動範囲を広げてくれる「翼」になりえます。
3輪特有の安定性は、加齢によるバランス感覚の不安を補って余りあるものです。坂道の多い地域にお住まいの方や、免許を手放してもアクティブに活動したい方にとって、この「カワサキの3輪」は最も有力な選択肢の一つになるはずです。
【まとめ】noslisuは坂道で活躍する電動モビリティ
「noslisuは、坂道でその輝きを増す」。これが、筑波山のヒルクライム・ダウンヒルを終えた時に感じた率直な感想です。
noslisuのパッケージングは、登りでは圧倒的なアシストと安定感を、下りではディスクブレーキとサスペンションレスによる安全性を提供します。
また、メーカー希望小売価格の39万8200円は、純粋に電動アシスト自転車としてみると、高価格帯の商品です。
しかし、免許不要で乗れる乗り物という観点では、(1)高速、(2)長距離を移動できる、(3)坂道に強い、という特長があります。
これらの要素を踏まえると、シニアカーの速度・航続距離に不満がある方、あるいは自転車の走行安定性に不安がある方にピッタリの電動モビリティと言えるでしょう。
もしあなたの家の周りに、これまでは迂回していた急な坂道があるのなら、ぜひ一度noslisuの購入を検討してみてほしいと思います。
文:黒石研仁/写真:Kawasaki Good Times 編集部






