
Kawasaki
Z900 SE
2026年モデル
総排気量:948cc
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:810mm
車両重量:215kg
発売日:2025年7月15日
税込価格:166万1000円
街乗りレビュー

排気量948ccとは思えないほど街乗りがしやすい!
Z900 SEは、写真で見ていたよりも実物の存在感がありました。
フロントマスク、燃料タンク、エンジン周辺、テールまわり、どの部分も凝った造形で、“彫の深さ”に魅了されました。各部は丸みを感じさせつつ、複雑な多面体的要素があり、非常に奥行きのある立体的なスタイリングをしています。
カワサキが「Sugomi」デザインと称する、このシャープでエッジの効いた外観は、現代のスーパーネイキッド系Zならではのものといえるでしょう。






「これは手ごわそうだ」と思い跨ると、今度は逆の意味で驚きました。
車体がコンパクトで、足つき性も非常に良好。鋭いフォルムからは想像できないほどに、自然なライディングポジションです。

Z900 SEのシート高:810mm
ライダーの身長・体重:175cm・73kg

Z900 SEのシート高:810mm
ライダーの身長・体重:175cm・73kg
ステアリングアングルは左右33°ずつで、スポーツモデルとしては充分よく切れます。車両重量は215kg、エンジンまわりの重さは感じますが、取りまわしも排気量から受ける印象よりも軽々こなせました。跨ったまま、前後に押し引きもしやすい機種です。

イグニッションをオンにすると、たちまち排気量相応の重低音が響きます。太さや重さを感じさせる力強い排気音は、車体のスタイルにもマッチしていると思いました。音量はけっこう大きめなので、路地や住宅街では、なるべく回転数を上げないように走るといいかもしれません。
最初の発進時に、このモーターサイクルは「スポーツモデルだ」と気づくはずです。スロットルレスポンスは、スーパースポーツマシンかと思うほどで、油断をしていると、加速力に身体が置いていかれます。

そのため街中の走行時は、スロットルワークを慎重に行ないました。2025年モデルから搭載されている新エンジンは、低回転域の力強さを従来モデルよりも高めています。4気筒エンジンでありながら、発進時からスロットルをほとんど開けることなく、グイグイと前に進む感覚があります。
慣れてくればスポーティで楽しいもの。信号が青に変わった瞬間の走り出しでさえ、面白さが感じられます。ただ、ゆったり走りたいときは、疲れてしまうかもしれません。
ピーキー過ぎると感じる方へのおすすめは、ライディングモードを出力を抑えた「RAIN」に切り替えること。私は、初めて不慣れな道や、ツーリング中に疲れを感じた際に多用しました。

ライディングモードは「SPORT」「ROAD」「RAIN」と任意の設定が可能な「RIDER」が用意されています。「RAIN」は、ウエットな路面状況に合わせて、出力を抑え、トラクションコントロールの介入度を最大にするのが特徴ですが、混雑した市街地や狭い路地、シビアな操作が求められるタイトな峠道などでも、活躍します。
Z900 SEの場合、「SPORT」「ROAD」のフルパワーを知らなければ、「RAIN」でも充分にスポーティだと感じられる仕様です。妙に出力を押さえつけたような、気持ち悪い窮屈さを感じさせない点が魅力だと思いました。

レスポンスの鋭さを除けば、街中でも非常に扱いやすいモデルです。信号待ちでの停車姿勢も非常に安定しており、ふらつきなどの不安を感じませんでした。
ちょっとした停車で、グローブをはめ直したり、跨ったままポケットの中に入ったスマートフォンを取り出し、通知を確認したりといったことが気軽にできてありがたかったです。

▲メーターは5インチのカラーTFTディスプレイ。スマートフォンとの接続ができ、「RIDEOLOGY THE APP」を使えば、ターン・バイ・ターン式のナビゲーション表示もできる最新式のものです。

▲Z900 SEのフロントカウル内にはさりげなくUSB Type-C電源が標準装備されています(スタンダードモデルは、アクセサリー扱い)。

▲ヘルメットホルダーはイグニッションキーで施解錠できる使いやすいタイプ。
高速道路走行レビュー
加速は自由自在、クルーズコントロールも装備
高速道路では、Z900 SEが持つパワーのポテンシャルを垣間見ることができます。
トップギアの6速だと、90km/hで4000rpm弱、100km/hで約4400rpm、110km/hで約4900rpmといったところでした。最高出力91kW(124PS)は9500rpmで発揮するため、公道では常に余裕があります。

ギアの選択にシビアにならなくてもいいのも特長。Z900 SEは1速で100km/h近くまで加速できる性能を持っているため、いい意味でいい加減な走りが可能です。
私は今回の試乗期間中に、首都高速や常磐自動車道、三陸沿岸道路などを延べ600kmほど走行しました。

そこで感じたのは、意外にも「もっと飛ばしたい」という欲求が起きないことです。常に制限速度の上限近い速度で走行を続けていましたが、50km/h規制の道でもストレスは感じず、大らかな気持ちを保ち続けられたのが嬉しかったです。
ネイキッドスタイルのため、走行風はほぼ全身で受けるかたちとなります。しかし、ライディングポジションの自由度が高く、着座位置や姿勢を変えられることで、肩こりや腰の疲れも感じにくくなっています。

とくにシートの前後長が見た目の印象よりも長めに取られているのが、ありがたいポイントでした。前方に座って疲れたら、後方に座りやや前傾姿勢に。その逆もまたしかり。ハンドルの位置も私の体格ではちょうどよく、腕が突っ張ることもなく、肘の曲げ方をいろいろと変えられます。

シートのクッション性も良好です。充分な厚みと適度な反発力があり、2日間で900kmほど走っても、お尻が痛くはなりませんでした。外観は尖ったスタイルをしていますが、快適性は追求されています。
それを象徴するかのように、2025年モデル以降の新型Z900シリーズには、エレクトロニッククルーズコントロールが標準装備されています。

▲エレクトロニッククルーズコントロールは、左ハンドルのスイッチで操作します。
制限速度の上限まで加速し、作動スイッチを押せば、その速度をキープしたまま走り続けてくれます。右手のスロットル操作の負担が減ることで、いっそう快適に。総合的に見て、想定よりもはるかに楽な長距離移動ができたので、ツーリングでは予定以上に遠くへ行くことができました。
また、KQS(カワサキクイックシフター)が備わっているのも魅力です。これがツーリング中にもっとも活躍したのは、首都高速でした。

▲KQS(カワサキクイックシフター)標準装備!
速度の変動が激しい首都高速では、クイックシフターを使うことで、楽しさだけでなく、安全性にも貢献していると思いました。
Z900シリーズに搭載されているクイックシフターは、最新式のわずか1500rpmから使用可能なもの。アップ/ダウンのどちらにも対応しています。アイドリングからほんの少しスロットルを開けた状態で使えるため、停車時と発進時、渋滞での1速半クラッチ走行をのぞけば、クラッチレバーをほとんど握る必要がありません。
さらにアシスト&スリッパークラッチも搭載されているため、左手のレバーを握ることによる疲労は皆無でした。

▲アシスト&スリッパークラッチのおかげでレバーは軽々。大型モーターサイクルではとくに恩恵を感じます。

▲ETC2.0車載器もリアシートの下に標準装備されています。リアシートはイグニッションキーを使って簡単に外すことができ、ライダー側のシートはリアシートを外した状態で、上に持ちあげることで外れます。

▲ETC2.0車載器もリアシートの下に標準装備されています。リアシートはイグニッションキーを使って簡単に外すことができ、ライダー側のシートはリアシートを外した状態で、上に持ちあげることで外れます。

▲主に高速道路を走って計測した際の実測燃費は293.1km÷13.1L=22.3km/Lでした。WMTCモード値は、20.5km/Lなので、走り方によって伸ばせることが分かりました。燃料タンク容量は17L。20.5km×17L=348.5km。航続距離は充分。メーターで航続可能距離の目安も表示できます。油種はハイオクです。

▲夜間はヘッドライトの明るさに驚きました。小顔なフロントマスクからは想像しにくいほど、照射範囲が広くて、とても走りやすかったです。
ワインディングロード走行レビュー
やはり走りが楽しい!“SE”の専用装備が光る上質な乗り味
「スポーツネイキッド」や「ストリートファイター」というカテゴリーでくくられることもあるZ900 SEの主戦場は、ワインディングロードでしょう。
マスの集中化を徹底した車体は、高い旋回性を持っています。ハンドリングは軽やか。行きたい方向に目線を向ければ、自然と向きを変えてくれると感じるほどに素直です。

それでいて路面追従性は非常に高く、常に安心した接地感を得ながら走れました。
Z900の上位機種となるZ900 SEは、オーリンズ製S46リアショックを標準装備しています。上質な乗り心地とともに、コーナリング時の動作性が高いのも特長です。フロントにはΦ41mmの倒立フォークを装備。フロント・リアともにプリロード調整が行なえます。

▲ホリゾンタルバックリンクリアサスペンションは、オーリンズ製のガスショックを搭載。プリロード調整は手で行なえます。

▲ホリゾンタルバックリンクリアサスペンションは、オーリンズ製のガスショックを搭載。プリロード調整は手で行なえます。

▲頼もしい太さの倒立フォーク。リアショックのカラーと合わせてZ900 SEはゴールドカラーのアウターチューブを採用しています。
今回の試乗車のタイヤはダンロップのスポーツタイヤSPORTMAX Q5A。タイヤからサスペンションを通して、走行時の路面の状況が、肌で分かるような感覚が得られました。
さらにトラクションコントロールやIMU(慣性計測装置)が得た情報を活用した高精細なABSといった心強いサポート機能も備えています。
高回転域を楽しもうにも、常識的な速度域では1速か2速で事足ります。峠道では、1速での走行と、2速固定のスムーズな走行、1~3速をクイックシフターで頻繁にシフトチェンジする走行を試してみました。

ツーリングペースでは、どれも楽しく、Z900 SEの懐の深さを感じました。走りの腕を問わず、好みにも幅広く応じ、誰もがモーターサイクルでの走りを存分に楽しめる一面を持っているといっていいでしょう。
その走りは、たしかな制動力によって支えられているともいえます。Z900 SEは、スタンダードモデルと比べ、フロントブレーキ性能が強化されているのも特長です。

フロントのΦ300mmブレーキディスク、ラジアルマウントモノブロックキャリパー、 ブレーキパッドはブレンボ製のものを装備。加えてニッシン製ラジアルポンプ式マスターシリンダーや、専用のステンレスメッシュ製ブレーキホースが備えられています。
これらによって、コントロール性能に優れたブレーキ操作を実現できます。レバーを握った感触は、ガツッと唐突なものではなく、「このくらい効かせたい」というイメージを忠実に再現してくれる印象でした。そのうえで、入力を強くすれば、力強く制動力を発揮します。 走っているときにありがたいのはもちろん、取りまわしの際も不意に効きすぎてしまうことがないため、安心感があります。

エンジン、車体、サスペンション、ブレーキ、タイヤ、さらにライディングポジションの自由度の高さなど、あらゆる要素が掛け合わされることで、抜群の面白さを生んでいるのだと思いました。
まとめ
Z900 SEは、戦闘的な“Sugomi”デザインでスポーティさを表現したスーパーネイキッド。それは間違いではありません。しかし、実際にさまざまなシーンを走ることで、それだけではないことがよく分かりました。
街乗りから長距離ツーリングまで、オンロードの公道走行はオールマイティにこなせます。

カワサキの「Z」で「900」というと、象徴的な存在のZ900RSシリーズがどうしても目立ち、やや影が薄くなっていることは否めません。けれど、まぎれもなくこのZ900 SEも名車です。
もし興味を持っていただけたなら、まずはカワサキプラザの店頭などで、実車をご覧いただきたいと思います。

“Sugomi”デザインのスタイリッシュさや、仕上げの美しさ、全体から醸し出される上質さは、目の前にすることで、きっと何倍も感じられます。
試乗も可能なら、ぜひ味わってみてください。マスの集中化を図った車体構成と同様に、モーターサイクルの核心である走りの楽しさを凝縮した一台だということが必ずや感じられるはずです。
文:西野鉄兵/写真:井上 演、西野鉄兵



