カワサキの大型モーターサイクルの中でも象徴的なモデルとして、長年人気を集めているZ900RSシリーズがモデルチェンジを果たしました。この記事では、注目すべき進化のポイントや外観の主な変更点、シリーズ各車の特徴などについて、まとめて紹介します。

「Z900RS」シリーズ 2026年モデルは3機種

2026年モデルとなる新型Z900RSシリーズが世界初公開されたのは、2025年10月29日11時30分過ぎ、Japan Mobility Show 2025のプレスデーでのことでした。排出ガス規制への対応を除いたモデルチェンジは2017年末に初期型が登場して以来、初めてのこととなります。

同ショーの会場では、新型「Z900RS SE」と新型「Z900RS CAFE」が展示されました。それらに加え2026年モデルには、もうひとつのバリエーション「Z900RS Black Ball Edition」が存在することも同日、正式に発表されています。

いずれも販売開始時期は2026年2月の予定です。スタンダードの「Z900RS」は未発表となりますが、Z900RS Black Ball Editionが主要装備面では、スタンダードモデルに該当します(外観は特別仕様車ならではのデザイン。詳細は後述します)。

Z900RS CAFEは、スタンダードモデルをベースに、フロントカウルや専用ハンドル・シートなどを装備し、カフェレーサースタイルに仕立てられた仕様。Z900RS SEは、ブレーキやサスペンションを強化した上級グレード。2026年モデルでは、ドライブレコーダーとUSB Type-C電源ソケットも備わっています。

いずれも主要諸元は後日発表される予定です。車両価格には、ETC2.0車載器が標準装備されていることが含まれています。またアフターサービスが充実した「カワサキケアモデル」であることも従来モデルと同様です。

世界初公開された直後には、さっそくプロモーションビデオも配信されました。

画像: New Z900RS SE / Z900RS www.youtube.com

New Z900RS SE / Z900RS

www.youtube.com

スタイリング写真で見比べる新型と従来型

外観は大胆な変更は行なわず、歴史的名車「900 Super 4(通称Z1)」の遺伝子を受け継いだ、好評のスタイリングを継承しています。ただ、従来モデルと比べてみると、新型の外観上の特徴が見えてきます。

まず全車共通でパッと気づく変化は、エキゾーストパイプとサイレンサーではないでしょうか。

『CAFE』以外はハンドルもナロータイプになり、その点も目立っています。

さらにラジエーターやシートも見た目からちがいが分かる部分。細かなところだと、後方の荷掛フックを隠すように反射板が備わったのも変更点です。

ここからは、大幅に刷新された“中身”の部分を見ていきましょう。

新エンジンを搭載、電子制御装備が充実

画像1: 新エンジンを搭載、電子制御装備が充実

最大のトピックは水冷DOHC並列4気筒エンジンが新しくなったこと。排気量や最高出力などの数値は未発表ですが、900ccクラスであることは変わりません。

大型モーターサイクルのスポーツモデルで採用が相次いでいる、電子制御スロットルバルブが組み込まれました。

これによりKQS(カワサキクイックシフター)エレクトロニッククルーズコントロールが搭載可能となり、利便性と快適性を向上させています。

画像: ▲KQS(カワサキクイックシフター)は全車共通装備。わずか1500rpmから使用できる最新式のもの。シフトアップ/ダウンのどちらにも対応しています。

▲KQS(カワサキクイックシフター)は全車共通装備。わずか1500rpmから使用できる最新式のもの。シフトアップ/ダウンのどちらにも対応しています。

画像: ▲エレクトロニッククルーズコントロールはハンドル左スイッチで操作します。スイッチボックスも一新。アシスト&スリッパークラッチは従来モデルから継続採用。グリップヒーターはアクセサリーパーツとして用意されています。

▲エレクトロニッククルーズコントロールはハンドル左スイッチで操作します。スイッチボックスも一新。アシスト&スリッパークラッチは従来モデルから継続採用。グリップヒーターはアクセサリーパーツとして用意されています。

吸気バルブや吸気ファンネル、カムプロフィール、ECU設定も刷新され、エンジンは全面的に改良されています。出力特性に関しては、従来モデルで好評だったダイレクト感のある駆動フィールを受け継ぎつつ、低~中回転域の操作性向上し、高回転域では力強くスポーティな特性にしたと発表されました。

画像2: 新エンジンを搭載、電子制御装備が充実

カワサキが誇る最先端のエンジン&シャーシのマネジメントパッケージである、KCMF(カワサキコーナーリングマネジメントファンクション)が導入されたことも大きなポイントです。

これは、ボッシュ製のIMU(慣性計測装置)を用いて、コーナリング中、エンジンとシャーシ各部のパラメーターをリアルタイムでモニタリングし、エンジンパワーやブレーキ効力を最適な状態にコントロールしてくれるというもの。

具体的には、2段階のKTRC(カワサキトラクションコントロール)とともに、アップデートしたABSがその役割を担います。IMUからのフィードバックにより、ABSにコーナーブレーキングマネジメント機能が追加。さらにストレートでの減速時に後輪が浮き上がるのを抑える機能も備え、コーナーも直線路もより高い安心感を持って走れるようになりました。

画像3: 新エンジンを搭載、電子制御装備が充実

エンジンの変更に伴い、エキゾーストシステムも刷新。4-into-1のレイアウトは変わりませんが、エキゾーストパイプは前方へ張り出す形状になり、並列4気筒エンジンの存在感をこれまで以上にアピールしています。プリチャンバーの形状はマスの集中を図るコンパクトなものになりました。

画像4: 新エンジンを搭載、電子制御装備が充実

サイレンサーも新設計のものに。70mm延長した新たなメガホンサイレンサーは、ヘアライン仕上げで高級感があります。音質にもこだわり、従来以上に低音域を豊かに響かせるものになったといいます。

ハンドルとシートの変更によりライディングポジションを最適化

もともと大型モーターサイクルビギナーにも乗りやすいと好評だったZ900RSですが、より多くの人が快適に乗車できるように、ハンドルとシートが新たなものに変わりました。

画像1: ハンドルとシートの変更によりライディングポジションを最適化

Z900RS SEとZ900RS Black Ball Editionのハンドルは、従来のスタンダードモデルと比較し、グリップ位置を内側に50mm、下方に38mm移動しています。

画像2: ハンドルとシートの変更によりライディングポジションを最適化

シートは、タックロール形状がより強調されたデザインに。ロール部に厚みのあるウレタンフォームが内蔵され、クッション性を高めています。シート高自体は従来モデルより10mm高くなりますが、着座時は沈み込むため足つき性はほぼ変わらないようです。

フレームは従来モデルを継承した軽量トレリスフレーム。Z900RS Black Ball EditionとZ900RS CAFEに備わるフルアジャスタブル倒立フロントフォークやホリゾンタルバックリンク式リアサスペンション、ラジアルマウントブレーキにも変更はありません。

外観面では、従来型で好評だった部分にあえて変更を加えていないことが今回のモデルチェンジのキモです。Z1を彷彿させるティアドロップ型の燃料タンクやテールカウルとテールランプ、丸型LEDヘッドライトなどは、従来のイメージを引き継いでいます。

また、メーターユニットに大きな変更がなかったこともトピックのひとつ。流行のTFT液晶ディスプレイを用いることなく、2眼のアナログメーターと液晶パネルという組み合わせを貫いています。砲弾型のメーターカバーもこれまで通り。

画像3: ハンドルとシートの変更によりライディングポジションを最適化

メーターの機能はバージョンアップしています。スマートフォン接続機能が追加されました。アプリ「RIDEOLOGY THE APP MOTORCYCLE」を使うことで、車両情報やライディングログの取得、メーター側への着信やメール受信表示が可能に。ナビゲーション機能や音声コマンドも使用できる最新式です。

【新型と従来型の主な装備内容の比較】

装備内容Z900RS(新)Z900RS(従来モデル)
ETV(電子制御スロットルバルブ)
KQS(カワサキクイックシフター)※シフトアップ/ダウン対応
エレクトロニッククルーズコントロール
IMU(ボッシュ製慣性計測装置)
KCMF(カワサキコーナリングマネジメントファンクション)
ABS ※新型はIMU 搭載により強化
KTRC(トラクションコントロール)
スマートフォン接続機能
サウンドチューニング
アシスト&スリッパ―クラッチ
エルゴノミクス
※ERGO-FIT ローシート(標準シート)、ERGO-FIT ハイシート
ヘルメットロック
インターナルカットキー
USB Type-C 電源ソケット
※新型Z900RS SE のみ搭載
GPS 対応前後2 カメラドライブレコーダーシステム
※新型Z900RS SE のみ搭載

各モデルの特徴&人気投票

ここからはZ900RS SE、Z900RS CAFE、Z900RS Black Ball Editionの各車の特徴を紹介します。

足まわりを強化した上級グレード、ドラレコ標準装備

ハイグレードモデルとなる『SE』は、ブレンボ社製ブレーキパッケージオーリンズ製リアサスペンションを採用しているのが従来モデルから継続した特徴です。

画像: ▲ブレンボ社製のΦ300mmフロントディスク、M4.32ラジアルマウントモノブロックキャリパー、ブレーキパッドを装備。さらに小径のニッシン製ラジアルポンプ式マスターシリンダーや、ステンレスメッシュ製ブレーキホースを採用し、制動力とコントロール性を徹底的に追求しています。

▲ブレンボ社製のΦ300mmフロントディスク、M4.32ラジアルマウントモノブロックキャリパー、ブレーキパッドを装備。さらに小径のニッシン製ラジアルポンプ式マスターシリンダーや、ステンレスメッシュ製ブレーキホースを採用し、制動力とコントロール性を徹底的に追求しています。

画像: ▲オーリンズ社製のS46リアショックは、シングルチューブ構造のアルミニウム製ボディ。市販品とは異なる、密閉性に優れたダブルリップ式ダストシールを採用しているのも特徴。リモートプリロードアジャスターを備え、工具不要で簡単に設定を変更できます。

▲オーリンズ社製のS46リアショックは、シングルチューブ構造のアルミニウム製ボディ。市販品とは異なる、密閉性に優れたダブルリップ式ダストシールを採用しているのも特徴。リモートプリロードアジャスターを備え、工具不要で簡単に設定を変更できます。

リアショックのカラーに合わせて、フロントフォークのアウターチューブがゴールドカラーになっているのも『SE』ならでは。ホイールもゴールドカラーで、“スペシャルエディション”にふさわしい配色となっています。

画像1: 各モデルの特徴&人気投票

この2026年モデルは、Z1を象徴するファイヤーボールカラーが採用されたことも話題となっています。これまでもファイヤーボールカラーは、初期型Z900RS(2018年モデル)や「Z900RS 50th Anniversary」など、節目でのみ採用されてきました。

画像2: 各モデルの特徴&人気投票

新型『SE』のファイヤーボールカラーは、過去のモデルよりも彩度と明度を高めたオレンジを採用。タンクのボディカラーはブラウンではなくメタリックブラックとなり、配色のコントラストを高めています。

さらに2026年モデルでは、新たにUSB Type-C電源ソケットドライブレコーダーも『SE』の標準装備品に加わりました。

画像: ▲アクセサリーパーツとしても用意されているUSB Type-Cの端子を採用した純正電源ソケット。ハンドル右側の使いやすい位置に設置されています。

▲アクセサリーパーツとしても用意されているUSB Type-Cの端子を採用した純正電源ソケット。ハンドル右側の使いやすい位置に設置されています。


“マッハ”シリーズをオマージュしたグラフィックを新採用

Z900RS CAFEは、フロントカウルと専用シート、さらにローポジションハンドルを採用し、カフェレーサースタイルを実現しています。サイレンサーとエキゾーストヒートガードがヘアライン仕上げになっているのも従来モデルから共通の特徴です。

2026年モデルでは、燃料タンクに新デザインのグラフィックを採用しています。これは往年の名車“マッハ”シリーズの「レインボーライン」をオマージュしたもので、それに合わせてKAWASAKIロゴも新たなものに。シリーズの他モデルが立体エンブレムを採用しているのに対し、この『CAFE』は転写フィルム製のロゴをあえて採用しているのもポイントです。

サイドカバーエンブレムのレタリングも統一感を持たせたブラック仕上げに。全体的にモノトーンで精悍な印象にまとめられています。


画像4: Kawasaki Z900RS Black Ball Edition 2026年モデル 発売予定時期:2026年2月 税込価格:152万9000円

Kawasaki
Z900RS Black Ball Edition
2026年モデル

発売予定時期:2026年2月
税込価格:152万9000円

“ブラックボール”、ただの真っ黒ではない!

先述のファイヤーボールをはじめ、過去にはイエローボールカラーのZ900RSも特別仕様車として登場しました。新型Z900RSに登場したのは“ブラックボール”カラーです。

燃料タンクは一見すると単色のブラックに見えますが、さりげなくグラフィックがあしらわれています。このグラフィックは初代Z900RSのファイヤーボールと同じパターンであることが発表されました。

画像3: 各モデルの特徴&人気投票

さらにサイドカバーには、Z1をイメージした「Double Overhead Camshaft」のエンブレムが備わっています。

画像4: 各モデルの特徴&人気投票

各部を見ていくと、特別なブラック仕上げのパーツが多いことに気づきます。メーターベゼル、ヘッドライトリム、ハンドルバー、ブレーキ&クラッチレバー、フロントフェンダーステー、ラジエーターシュラウド、ニーグリップカバー、燃料タンクキャップ、チェーン、前後ホイールにいたるまで、黒でまとめられています。

サイレンサーがヘアライン仕上げなのは2026年モデル共通ですが、この『Black Ball Edition』は、エンドキャップとエキゾーストヒートガードにもマットブラック塗装が施されました。これらのパーツには小さな傷が目立ちにくくなる効果を持つ、新開発の塗装技術が採用されています。


【アンケート】 あなたはどのモデルが好きですか?

三車三様、それぞれの個性を持つ、新型Z900RSシリーズ。あなたはどのモデルがとくに気になりましたか? 装備、デザイン、カラー、選ぶ理由は問いません。お好みのモデルをお選びください。投票後、集計結果をご覧いただけます。

  • 画像14: 新型「Z900RS」シリーズのラインナップや進化のポイントをまとめて解説|新エンジン搭載、電子制御装備を充実し、魅力を大幅にアップ!
    Z900RS SE
  • 画像15: 新型「Z900RS」シリーズのラインナップや進化のポイントをまとめて解説|新エンジン搭載、電子制御装備を充実し、魅力を大幅にアップ!
    Z900RS CAFE
  • 画像16: 新型「Z900RS」シリーズのラインナップや進化のポイントをまとめて解説|新エンジン搭載、電子制御装備を充実し、魅力を大幅にアップ!
    Z900RS Black Ball Edition
  • 画像17: 新型「Z900RS」シリーズのラインナップや進化のポイントをまとめて解説|新エンジン搭載、電子制御装備を充実し、魅力を大幅にアップ!
    Z900RS SE
    45
    5
  • 画像18: 新型「Z900RS」シリーズのラインナップや進化のポイントをまとめて解説|新エンジン搭載、電子制御装備を充実し、魅力を大幅にアップ!
    Z900RS CAFE
    27
    3
  • 画像19: 新型「Z900RS」シリーズのラインナップや進化のポイントをまとめて解説|新エンジン搭載、電子制御装備を充実し、魅力を大幅にアップ!
    Z900RS Black Ball Edition
    27
    3

投票ありがとうございました。

レポート:西野鉄兵

This article is a sponsored article by
''.