個性的な装備と仕様のnoslisu

Kawasaki
noslisu
2025年モデル
シート高:745mm-905mm
車両重量:31.4kg
税込価格:39万8200円

Kawasaki
noslisu
2025年モデル
シート高:745mm-905mm
車両重量:31.4kg
税込価格:39万8200円
2021年に川崎重工業のベンチャープロジェクトから誕生した「noslisu」は、「快適で気軽な移動体験をすべての人へ」というコンセプトのもと開発された3輪の電動アシスト自転車です。
最大の特徴は、なんと言っても前2輪・後1輪というユニークな車輪レイアウト。前2輪には車体の傾斜と連動してリーンする機構が搭載されており、ペダルを地面にこすらない角度(iPhoneの測定アプリ実測値で17度)まで、自由に傾けて走行できます。

▲ペダルを地面にこすらない範囲でリーンすることができます。
電動アシスト自転車ゆえに、この手の電動モビリティでよくみられる“自動姿勢制御システム”やカーブ走行時の“自動速度コントロール機構”は搭載されていません。乗り手側が車両の姿勢制御・車速を完全にコントロールできるため、初めて乗るユーザーであってもすぐに使いこなせるのではないでしょうか。
車体については、またぎやすいトラス構造の低床フレームと、上半身を前傾させることなく自然な姿勢のまま握れるセミアップハンドル(手前に湾曲している形状)が採用されています。
※ハンドルの高さは固定式
また、サドルは硬めのスポーティなタイプで、745〜905mmの間でサドル高の調節が可能です。身長180cmの筆者の場合、サドル高を一番高いポジションで固定するとちょうど良い高さでした。

▲またぎやすい低床なフレームを採用。

▲ハンドル両端が手前に湾曲している「セミアップハンドル」により、上体を倒さずに握れます。

▲シート高は745mm〜905mmの間で調整可能です。
車体サイズも普通自転車規格(全長:190cm以内、全幅:60cm以内)に収まり、「自転車通行可」の道路標識等があれば一般的な自転車と同様に歩道を走行できることからも、“3輪版の電動ママチャリ”という印象を受けました。

▲全幅は普通自転車規格の範囲内に収まる595mm。一部の歩道を通行できます。

▲全幅は普通自転車規格の範囲内に収まる595mm。一部の歩道を通行できます。
ちなみにママチャリでは基本的に、前かごの耐荷重は3〜5kg程度のモデルが多いですが、noslisuでは前かごがハンドルではなく車体フレームに直結しているので、最大20kgまでの荷物を載せられます。しかも積み下ろしがしやすいように高めの位置に搭載されているため、自転車で重い荷物をたくさん運びたい場合、noslisuは魅力的な選択肢のひとつとなるでしょう。

▲大きく重い荷物であっても安心の前かごは魅力のひとつです。
なお、3輪ということでサイドスタンドやセンタースタンドは搭載していませんが、代わりにパーキングブレーキ(後輪ブレーキ固定)と車体の傾きをロックするレバーを採用しています。
具体的には、パーキングブレーキは後輪ブレーキレバーを引きながら、付け根部分にあるボタンを押し込むことで作動し、車体の傾きはハンドルの手前側にあるレバーを引きながらボタンを押し込むことでロックされる仕組みです。駐輪場所が傾斜している場所では、一般的な自転車よりも駐輪しやすいかもしれません。

▲ハンドルバー手前にあるロックレバーを引いて、ロックボタンをかけると車両の傾き(左右方向)を固定できます。
ママチャリユーザーでも安心して乗れる3輪電動アシスト自転車
走行の始め方は一般的な電動アシスト自転車と同じで、後輪のロックを物理キーで解錠し、ハンドル手元のパネルにあるボタンを押して車両の電源を起動するだけ。パネルの表示を切り替えることで、現在のアシストレベルや航続距離、バッテリー残量を確認することができます。
アシストレベルはロング/オート/パワーの3段階あり、外装7段変速ギアも搭載しているため、21パターンの走行負荷を選択可能です。ちなみに、一充電あたりの走行距離はカタログ公称値ではロングモードで103.1km、オートモードで58.3km、パワーモードで54.6kmとされています。

▲手元のパネルで「航続距離」「アシストレベル」「航続時間」「電池残量」を切り替えて確認できます。
最もアシストが強力なパワーモードでは、漕ぎ出し直後からグググッと押されるようなモーターアシストがかかり、楽に発進・加速できます。
一方で、一番アシストパワーが小さいロングモードは、後ろからそっと押されているような感覚で、平地を巡航する場合や筋力に自信があるユーザー、あるいは夜間にヘッドライトを点灯させるためにバッテリーを延命させたいシチュエーション向け、といった印象です。
アシストレベルの切り替えは走行中でも行えるため、道路環境に応じてこまめに変更して運用すると、アシスト力と電池持ちのバランスを取った運用ができると思います。
気になったポイントとしては、前輪の切れ角が小さく、一般的な自転車よりも回転半径が大きいことが挙げられます。これは前輪を2輪にすることで得られた安定性の高さというアドバンテージとのトレードオフとも言えるものですが、注意が必要な場面も出てきます。
たとえば、道を間違えてしまい、180度旋回して来た道を戻らなければならないようなシチュエーションでは、ハンドルを切って普通に旋回しようとすると、歩道や路地など道幅の狭い場所では曲がりきれず何度も切り返すことになるでしょう。
そんなときは、サドルを持ち上げ車体後部を浮かせて、前2輪を中心軸としてその場で旋回(超信地旋回)することで、noslisuの全長程度の幅があればスムーズに方向転換できるようになりますので、ぜひ活用してみてください。

▲車体後部を軽く浮かせてその場で旋回すると、省スペースで切り返し可能です。
他方で、リーン機構により前2輪が独立して動くので、段差の乗り越えでの安定感は抜群です。左右どちらかのみに段差がある場合でも、もう片方のタイヤは地面に接地した状態を維持できるため、バランスを大きく崩すことなく走行できます。
段差の乗り越えや道路の傾斜に強く、かつ自分でペダルを漕がないと進まない電動アシスト自転車であるという特徴を踏まえると、免許返納後の移動手段としてのニーズにぴったりの一台、と言えるでしょう。

左右で段差の高さが異なる状況でも、両タイヤが接地した状態が維持されるので、安定して走行できます。
【まとめ】3輪のメリットを活かしたユニークな運用ができる一台

前輪2つ・後輪1つというユニークな車輪レイアウトを採用するnoslisuは、見た目のインパクトとは裏腹に、扱いやすさと3輪による安定感を両立した「実用的な電動モビリティ」という印象を受けました。
とくに、低床フレームとセミアップハンドルの組み合わせは、ママチャリと同様の構造で、かつ電動アシストユニットもパナソニックのものを採用しているため、現在一般的な電動アシスト自転車を利用しているユーザーであっても違和感なく乗り換えられることでしょう。
また、最大20kgまで積載できる前かごを搭載しており、斜面や段差があるような路面環境でもバランスを崩すことなく安定して走行できる点も嬉しいポイント。短〜中距離を移動できる移動手段のひとつとして、運転免許をまだ持っていないユーザーや免許を返納したアクティブシニア層にもオススメのモデルです。
文:黒石研仁/写真:Kawasaki Good Times 編集部