カワサキの伝統を上質に表現した、現代のZ

Kawasaki
Z900RS
2025年モデル
総排気量:948cc
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:800mm
車両重量:215kg
発売日:2024年9月1日(日)
税込価格:148万5000円
Z900RSはかつてのZ1・Z2をオマージュして、その雰囲気を外観にまとった、クラシカル風味の最新テクノロジーでつくられた最新モデル。
ベースとなったモデルはストリートファイタースタイルのZ900。かつてのZ1を彷彿させるデザインとは裏腹に乗り味はクラシカルなイメージはない。Z900自体アッパーミドルのスタンダードスポーツで、身軽さと自然なハンドリングが魅力。そんなスポーツネイキッドから誕生しているモデルだ。
キャラクターをはっきりさせるために、エンジンは低中速域を補強した性格にしてトルクを重視している。Z900の最高出力124PSから111PSにピークパワーを落したが、代わりにずっとフラットな性格になっている。

そんなZ900RSだが、まずサスペンションの動きが素晴らしい。路面の小さな凸凹を走っていても綺麗に吸収し、細かいガツガツした衝撃が伝わってこない。バネをソフトにしているわけではないのだが、高速減衰が滑らに作動し、素早いサスペンションの動きを上手く抑えていて、過度に大きなピッチングもしない。
さらに驚くのはエンジンの低速域での粘り。6速で1200回転だから、ほぼアイドリング回転で30~40km/hもいかないような速度で緩い上り坂すら上ってしまう。もちろんスロットルを開けなければならないが、ノッキングが出るのはかなりワイドオープンした時だけ。この粘りとトルクには感心する。

それでいて、サスセッティングひとつ変えずに、サーキットもいいペースで走れる。許容リーンアングルはこのクラスのスポーツネイキッドとして納得できる十分な深さだ。
リアの2本ショックに拘っていたら、これほどの幅広い走りをワンセッティングでこなせない。このZ900RS、姿はネオクラシックだが、走りは違う。美しく上質な外観意匠を持った最新のZなのだ。
文:宮崎敬一郎/写真:南 孝幸/ライダー:太田安治
※この記事は月刊『オートバイ』2025年6月号(モーターマガジン社)に掲載されたものを一部編集し公開しています。