大人気モデル「Z900RS」とはまた異なる魅力を持つ「Z900 SE」

Kawasaki
Z900 SE
総排気量:948cc
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
シート高:810mm
車両重量:215kg
2026年モデルの発売日:2025年7月15日(火)
2026年モデルの税込価格:166万1000円
※撮影車両は2025年モデルです。
2017年12月の発売開始から8年近くが経った現在も好調なセールスを続けているZ900RS。その兄弟車が車名に「RS」が付かないZ900だ。かつての750RS(ZII)やゼファーを想わせるネオレトロスタイルで人気を博しているZ900RSに対し、Z900はアグレッシブなルックスのストリートファイターというキャラクターが与えられ、国内向けにはスタンダードのZ900と、ブレーキと足まわりのグレードを高めた「SE」が用意されている。
Z900RSよりも後退したステップ位置と低いハンドルが形作るライディングポジションはオートバイとライダーの一体感が高いもの。グリップ位置がライダーから近く、肘を曲げる角度によって伏せ姿勢から垂直に起こした姿勢まで、上体の姿勢を自在に変えられる。
試乗したZ900SEが最もイキイキと走るステージはなんといってもワインディングロードだ。前後サスペンションはRSよりも締まったセッティングで、市街地ではコツコツとした突き上げ感があるが、加減速とコーナリングのGが大きくなるスポーツライディングでは素晴らしいスタビリティを発揮し、S字コーナーをクイックに切り返しても車体の反応が遅れることはなく、オツリも来ない。

良く言えば鷹揚、悪く言えばダルなZ900RSのハンドリングとはまったく違う俊敏さで、前後タイヤの接地感の高さ、文句なしのコントロール性を持つブレンボのフロントブレーキシステムと併せ、連続したコーナーを鋭く、リズミカルに駆け回れる。
エンジンは基本的にZ900RSと同じながら、圧縮比を含めた吸排気系は専用設計。ピークパワーはZ900RSよりも1000回転高いところで13PS高い124PSを発生し、7000回転を超えると明らかにZ900RSよりも鋭く吹け上がって1万回転までストレスなく回転が上昇する。

この高回転域でもピーキーさはなく、スロットルワークに忠実に反応して加減速するうえ、6軸IMU採用によってトラコンとABSの制御が緻密になったことでライダーのコントロールミスをカバーしてくれる場面が増えた。撮影場所は枯れ枝や落ち葉で路面コンディションが悪かったため、ブレーキング、立ち上がり加速では何度も電子制御の恩恵を受けた。それも、気をつけていないとライダーが気付かないうちに、だ。
ゆったりツーリングにはライディングポジションが楽でライダーの操作に優しく反応するZ900RSに分があるが、操る楽しさを求めるなら断然Z900 SEをお勧めする。
文:太田安治/写真:南 孝幸、松川 忍
※この記事は月刊『オートバイ』2025年8月号(モーターマガジン社)に掲載されたものを一部編集し公開しています。